兼題のコツ、どこまで写生的に詠めるか2012/04/20 02:26

 「汐干」と「松の花」の句会で、本井英主宰が特に厳選したとして、選句し たのは23句だった。 昨日挙げた私の2句を除いて、全部紹介してみる。

手元にも潮上げて来し大干潟       良

飛行機の車輪が見へる汐干潟       やすし

壬生屯所跡の静もり松の花        ひろし

老い父に金の杯松の花          正枝

引き潮の砂の湿りや汐干狩        華

東京が小さく見えて汐干潟        梓渕

砂がちの路地の奥なる松の花       ひろし

海峡をタンカーのゆく松の花       良

式終へし人ら庭へと松の花        なな

ひつそりと門閉ざされて松の花      さえ

赤旗の二本が境汐干狩          梓渕

磯宮の朱の鳥居や汐干潟         和子

松の花触れて花粉を飛ばしけり      梓渕

潮干狩り島へ五分の船の旅        六平

水鳥は水鳥で群れ汐干潟         ひろし

一輌の電車が着いて汐干狩        和子

一湾の照り翳りして汐干狩        良

テラスより眺める池や松の花       さえ

松の花切下げ髪の御後室         和子

汐干籠提げて親子の機嫌かな       良

いつの間に遠く離れて汐干かな      さえ

 主宰の選評。 上手い人は、上手い。 兼題のコツ、呑み込めている人と、 そうでない人がいる。 呑み込めていない人は、勉強になる。 たとえば〈汐 干籠提げて親子の機嫌かな〉、説明っぽさがない。 兼題だと、説明のし過ぎに なりがち。 歳時記の解説の続編でなく、自分の頭の中にあるファイルをめく って、その三次元空間、実景の中に自分を置いて、写生をする。 記憶や想像 からスタートした句の世界を、どうリアリズムにするか。 どこまで写生的に 詠むことができるかが勝負。 難しいところだが、楽しいところでもある。 深 見けん二先生は「兼題の写生です」と、言われた。