小津安二郎監督、茅ヶ崎館の「すき焼」2012/11/17 06:35

「美味しさの物語 幸福の一皿」で、小津安二郎監督のカレー粉を入れる「す き焼」を、女優中井貴恵が尋ねた茅ヶ崎館、子供がまだ小さい時に、夏休みに 泊ったことがあったので、感慨深かった。 昭和50(1975)年8月25日「広 尾短信」第19号。 「湘南の浜辺の松林の中に今や消えて行きつつある懐か しい「旅館」があった。小津安二郎監督が愛して多くのシナリオが生まれたと いう昔ながらの茅ヶ崎館には、薄っぺらなじゅうたんなど敷いていない板張り の廊下が磨き込まれて、芝生と松で造られた庭にはほうき目の消えることのな い美しい小道が走る。料理にも心がこもっていたし宿泊料も安かった。/炎天 下庭の手入れをしている四代目のご主人に「大変ですね」と声をかけると、こ んな美しい日本語が返ってきた。「ゆきとどきませんで」」

茅ヶ崎館は、消えていなかった。 番組で中井貴恵を案内して、今は葉山牛 だという「すき焼」「金雀枝(えにしだ)」を煮ていた人、五代目、森浩章さん と字幕に出た。 小津安二郎監督は、父親の故郷、松阪の肉を取り寄せていた という。 中井貴恵は、いうまでもなく佐田啓二の娘で、中井貴一の姉。 昭 和32(1957)年生れで、幼い頃、家に泊まりに来たりしていた独身の小津安 二郎に祖父のように可愛がってもらったという。 番組に宝物にしているとい う小津からの絵ハガキが出ていた。 黒沢明もそうだが、監督は絵コンテを描 くのだった。 中井貴恵、最近は絵本などの「大人と子供のための読み聞かせ の会」の活動をしているが、そこで小津安二郎作品も読むという。