桃月庵白酒の「四段目」2025/02/24 07:10

 白酒、そっちにいたのがこっちになり、趣味が仕事になってしまって、趣味がない、と。 大学の映研にいたが、この作品は「“引き”が違う」とかいう奴がいて、ぼんやり観ているのがわかった。 飽きっぽい、高尚なクラシックも、どれがどれだかわからない、一人二人くらい弾いていないのがいるのではないか、指揮者は本当に要るのか。 去年、星を見てみることにした、柳家小ゑんという専門家がいて、話を聞くといろいろ面倒くさい、月を見たいとは言えない、捨てるという古い望遠鏡をくれた、月を見たらもうよくなって、一週間くらいで飽きた。 噺家同士で、オチケンを作りたい、落語について語り合いたい。 夜席に、客がいない。 大したもんでないものに、お金を払うのが、文化。 落語研究会だけれど、われわれは研究しない。 一席、お付き合いを頂きます。

 番頭さん、使いに行った貞吉は芝居を観ているんだろう。 貞吉、旦那がおかんむりだ、奥へ行って、謝って来い。 おマンマを食べてません。 奥が先だ。 貞吉か、入れ。 伊勢屋さんへ行ったのは朝7時、今4時過ぎだ、何で遅くなった。 いろいろありまして、伊勢屋さんで蔵のお掃除を手伝ってました。 伊勢屋さんは、何とおっしゃっていた? 近々伺います、と。 嘘つけ、伊勢屋さんは、今までここにいらっしゃった。 おやおや。 また芝居を観ていたんだろう。 いろいろありまして、帰る途中で、あの人に出っくわしまして。 あの人? おっ母さんでして、去年の暮にお父っつあんが中気で寝たきりになったんで、お百度を踏むというので、一緒にお百度を踏んでおりました。 いつから、寝たきりになったんだ? 去年の暮。 おかしいな、正月、男の方が年始に見えて、貞吉をよろしくお願いしますと言ったのは、どなたなんだ。 あれは、古くから家に住みついている、おっ母さんの連れ合いで。 貞吉のお父っつあんじゃないか。

 芝居を観ていたんだろう。 芝居は大嫌いです。 みんな貞吉は芝居が好きだ、と言っているぞ。 みんなは足を引っ張っているんです、あたいの出世を妬んで。 何が出世だ。 芝居なんか、大っ嫌いです。 ちょうどよかった、明後日の休みに、店のみんなで芝居見物するんだが、だれが留守番してくれるか困っていた。 留守番をしておくれ。 商人は付き合いが大事です、お供致します。 いいや、留守番しておくれ。 お向こうの佐平さんが芝居を見て来て、「忠臣蔵」の「五段目」、猪の前足が団十郎、後足を海老蔵の親子がやるんだそうだ。 おかしい、成田屋がやることはない、嘘、旦那は騙されているんです、あれは一人でやるんです、あたいは今まで観ていたんですから。 やっぱり、芝居を観てたんだな。 しまった、図られたか。 蔵の中へ放り込むぞ。 おマンマを先に。 ガラガラ。 おなかペコペコで。 駄目だ。 お清どん、おなかペコペコなんだ、おむすびでも何でもいい、持って来て。 笑って、行きやがった。

 「忠臣蔵」好きなんだ。 「四段目」判官切腹の場、デーーン、デーーン、検視の二人、判官は白装束。 大星力弥、今生のお別れだ、下から見上げてイヤイヤをする。 三度目に、デーーン、「力弥、力弥、由良助はまだか」 「いまだ参上仕りませぬ」 九寸五分を右手に持つと、口を利いてはいけない。 「力弥、力弥」 「いまだ参上仕りませぬ」 「無念じゃと伝えよ」 バタバタバタ、大星由良助の到着。 「御前ッ」 「由良助かぁー」 「ははぁー」 「待ちかねたぁー」

 おなか、空いたなぁー、おマンマ、おマンマッ。 芝居観んのが、そんなに悪いのか。 おマンマ、食べないと、死んじゃうぞ。 おマンマ食わせずに貞吉が死ぬと、新聞に出る、お店の評判が落ちる、泣き面かくぞ。 ウソです、旦那様。

蔵の中だから、いいものがある。 芝居のことやって、気を紛らわそう。 裃と、三方に刀、刀は本物だ。 お清がちょいと覗くと、貞吉が腹を切ろうとしている。 旦那様大変です、貞吉どんが、ハラの中で、クラ切ってます! エッ、反対だろう、すぐ何でも持ってってやりなさい。 旦那が、お鉢を持って、蔵へ。 「ご膳ッ」 「蔵の内でかぁ」 「ははぁー」 「待ちかねたぁー」

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