柳家喜(七七七)三郎の「あたま山」2026/01/18 08:34

 ピースサインをして出た喜三郎、アウェイ感がたまらない、と。 喜三郎の喜は七七七、スリーセブン、お目出度い字なのに、読めない、ネットで出せない、致命的で。 草書体で、喜を崩している。 知らないから、つけちゃった。 困っている。 インターネットだと、●三郎になる。 品川の品の、口を七にしたもの、と言う。 売れっ子になっても、この字を使わないメディアでは、使わない。 普及に努めている。 コピペして出す、と教えてくれた人がいる。 年末になると、大きい会社が支払調書を送って来る。 それが文字化けして、ard#133144;となる、郵便屋さんには感心する、想像力がないと駄目。 いつでも、想像力は大事、皆様方次第、今日も変なネタでごめんなさい。 お願いですから、怒らないで下さい、最後まで。(羽織を脱ぐ)

 かかあがガミガミ言うので、出かけた。 腹が減ったな、桜だ、きれいだな。 サクランボが生ってる、食べちゃおうかな。 まだ、いくらでもある、只だよ。 腹いっぱいにして、口に泥、拾い食いだ。 甘酸っぱくて、瑞々しくて、うまかった。 晩になると、お腹が痛くなった。 なんだか胸も苦しい、恋じゃない、喉が、風邪引いてないのに、痛い。 アレッ!(と、頭に手をやり)何か生えてる。 抜けない、双葉だ。 まあ、いいか、明日の朝、かかあに抜いてもらおう。

 頭が重い、起き上がれないよ。 やっぱり風邪引いたのか、アッ、頭が伸びてる。 桜だ、満開だ。 誰だい、ひとんちに、こんないたずらしたのは。 お前さん、生えてるね。 生えちゃったんだよ。 お腹の熱で温まって、時期だから、満開になった。 きれいだ、あたし、こんな人見たことないよ、自慢して来る。

 八っつあんちに、花見に行こう。 「あたま山」だよ、みんなで行こう。 どんどん見物人が集まる。 おかみさんは、首から箱を下げて、お金を入れさせる。 お膝送りで、詰めて、詰めて。 いいから、山登れ。 ワーーーッ!(大丈夫ですか、と喜三郎) この話、ここを呑み込んでもらわないと、面白くない。 ウォーーーッ! きれいだね。 一杯やろう。 朝早くから、夜桜まで、歌を歌い、踊りまくる、喧嘩が始まる、ゲロを吐く。 眠れない。 出てってくれ、一人にしてくれ。 これで、静かに眠れる。 長屋の戸を、薄く開ける。 桜を横になって見る、寝桜だ。 風流ですね。

 こいつは、ひと思いに抜いちゃえ。 医者は、初めて見たが、こういうのに詳しいのを知っていると、手紙を書いてくれた。 腕のいい、植木屋。 グッーーーッ! 痛い、痛い! 首が抜ける。 荒縄をかけて、滑車で抜くことにしたい。 根から、スッポンと、抜けました。 ありがとうございます。  大きな穴になった。 風がゴォーーッ! 真っ暗だ。 オーイ! オーイ! オーイ! ヤッホー! ヤッホー! 深そうだね。 どれだけ深いか、お弁当の残りの里芋を入れてみよう。 コロコロコロ! わかんないすね。 人参、青梗菜も入れてみよう、鍋つくるんじゃない。

 一雨、来そうだ。 ポツリ、ポツリと降り出したのが、盆をひっくり返したような大降りになった。 チャポン、チャポン、水が溜まっている。 このまんまで、いいよ。

 何日かすると、ブーンと、蚊が飛ぶ。 蛙がいる、ボウフラがたくさん湧いている。 おかみさんは、何で抜いちゃったの、と。 何か、動いたぞ、跳ねた。 お前さん、鮒、ドジョウ、ナマズがいる、あたまが池だよ。 大自然の神秘だ。 だって、あるじゃない、こんな面白い人、ほっておけない、みんなに知らせて来るよ。

 ワーーーッ! てんで、釣り竿を持った人や、見物人が集まる。 朝釣り、夜釣り、芸者や幇間を乗せて大騒ぎする屋形舟は出るは、花火大会も開かれる。 眠れない。 みんな、出てってくれ、一人にしてくれ。 横になると、戸の隙間から、細長い釣り竿を突っ込んで来る。 出てけ! 生きてんのが、嫌になった。 何を思ったのか、この男、自分で、自分の頭の池に、ボッチャーーン!

立川笑二の「転失気」2026/01/17 07:27

 10日の夜は、第692回の落語研究会、三田から一旦帰宅し、昼寝して出掛けた。 笑二は、丸刈、丸顔、大声を出す。 小学校の学校寄席は、受けると言う。 裏の空き地に囲いができたよ。 へい! 鳩が何か落とした。 フン! で、ワッと受ける。 桃太郎の咄。 お婆さんが川へ洗濯に行くと、芋が流れて来た。 お婆さんは、その芋をみんな食べて、大きなオナラをした。 ブーーッ! 山へ柴刈りに行ったお爺さんは、柴を刈らずに、臭かった。 シーーン。

 腹の具合が悪い和尚に、「てんしき」はありますか、と医者が尋ねる。 和尚は分からず、訊けばよいのに訊きそびれて、ありませんと言ってしまう。 薬の仕度をしておきますから、と医者は帰る。 珍念を呼んで、「てんしき」を教えたが覚えているか、と聞く。 教わっていません。 嘘をつくな、忘れたと言いなさい、門前の花屋で一つ借りて来なさい。 花屋は、大きいのと小さいのがあるが、どちらがいい、何を包むのかと。 風呂敷じゃない、おじさんも「てんしき」を知りませんか。 婆さんに聞いてみよう。 化けるほど齢を取ってて知らないのか。 「てんしき」は、二つあった。 床の間に飾っておいたら、田舎の人が褒めたので、お土産にやった。 もう一つは、お付けの実にして食べた。

 和尚は珍念に、薬を取りに行って、先生に直接会って聞いてこい、恥をかいて覚えると忘れなくなる、と言う。 先生、こんちは、「てんしき」って何のことですか? 放屁のこと、オナラのことだ、屁、屁だ、お尻から出る。 臭い、黄色いのですか? 色があるかは、わからぬ。 「転失気」と書く。 有難うございました。

 和尚は「てんしき」を借りて来いって言った、おかしなことだ。 一日オナラを借りに歩いていた、和尚も、みんなも知らないんだ。 和尚が違うことをいったら、盃のことだって言おう。

 珍念、先生に聞いてきたか。 「てんしき」って、あれなんですね、薬を煎じてきます。  先生は、何だと言っていた? お盃のことだと。 酒を呑む器「天に口」「呑酒器」か、珍念、そうなると思ってた、私をひっかけようとしたな、本当のことを言ってごらんなさい。  先生は、「てんしき」は元気のことだと、気力、活力。 なるほどな。 和尚さん、本当に知っていたんですか。 珍念、「てんしき」を出しながら、働きなさい。

 医者が来た。 和尚、元気になりましたかな。 おかげで「てんしき」になりました。 出ましたか? 沢山、出ました。 じゃあ、私はこれで。 先生には「てんしき」になった姿を見てもらいたい。 ぜひ、お願いします。 (気合を入れて)ンーーッ、アッーーッ! マカハンニャハラミッタ! こういう宗教、宗旨ですか。 これです、マカハンニャハラミッタ!(と、両手をひろげる) 和尚、気が緩んで、ブーーッ! 今、出ましたな。 今の私のは、さきほどの「てんしき」に比べたら、屁みたいなものでございます。

「笑門来福」一之輔のマクラ<等々力短信 第1198号 2025(令和7).12.25.>2025/12/25 07:09

 朝ドラ『ばけばけ』の主題歌は、「日に日に世界が悪くなる 気のせいかそうじゃない」と始まる。 2025年を振り返ると、何かそんな年だったけれど、「笑う門には福来る」と、笑い飛ばして、新しい年を迎えたい。 春風亭一之輔のマクラで。

 7月「欠伸指南」。 世界最高峰の落語会にようこそ。 落語にも役立つと言われて、日本舞踊を習ったけれど、身に付かなかった。 「松の緑」で、おさらい会に出た。 お師匠さんが、お金がかかるわよ、と。 お金がかかるんですか? 当り前よ、素人なんだから。 それで、こちらは一応プロの落語家なんだから、落語をやって、チャラにしてもらうことにした。 いいわよ、色どりになるからと、師匠。 悪魔との契約のようだ。 「松の緑」、踊りは10分弱、一人で踊る。 すぐに頭が真っ白になって、判んなくなった。 師匠が、袖で踊ってあげると言ってくれたんだが、視力が0.1ないくらい、袖で着物の婆アが、もだえているだけ。 空白が、何時間にも思えた。 手拭が飛んできた。 私の踊りは、3分半TKO。

 映画『国宝』を観て、びっくりした。 一年以上稽古して、あれをやったというので、腰が抜けた。 何とも言えなかった。 かみさんと観たんだが、俺、横浜流星でなくてよかった、と言った。 もしやったら、べらぼうに陳腐な『国宝』になっちゃう、ウチで洗濯して、便座の裏をきれいにして、座ってやれって、言われてるほうがいい。 吉沢亮なら、何とかなるかな、酔っ払って、隣の家に入って、小便する(「キャーッ! 言い過ぎ」、と女性の声)。 芸事は、身に付かない。

 11月「睨み返し」。 クリスマス、子供も小さい頃は、いろいろ欲しいと言っていた。 真ん中の子、五つか、六つの時、朝起きて、アーーッ! と、悔しがった。 デジカメ仕掛けたけど、写ってなかったって…。 私が七、八つの時、野球盤、大きな箱に入ったのが欲しかった。 お袋が、靴下吊るしとけと言うから、バスタオル二枚もらって、縫って、縫い目を裏返しにした。 12月20日、父が楽しみだね、と言った。 当日、入ってない。 状況として、どうなんだ、ずっとモヤモヤしている。 どう思うって、かかあに話したら、お父さんもお母さんもサンタを信じていたんでしょうね、と。

 12月の頭までに、手拭を染める。 高くなっている、台風で東南アジアの綿花の畑が駄目になっているって、毎年聞く。 二ッ目の時の、倍以上になっている。 正月に交換するから、染める、どうすんのと思いながら、噺家の誇りでもあり、止めようと言う奴がいない。 時々、メルカリに出て、腹が立つ。 買い手がついてないのにも、腹が立つ。 原価より安く出てる。

瀧川鯉昇の「質屋蔵」後半2025/12/17 07:16

 番頭、一人では怖いというのだったら、町内の熊さんを呼ぼう。 貞吉や、立ち聞きしていたな。 座って聞いておりました。 熊さんを呼んできてくれ。 お前は口が軽い、余計なことは言うな。 熊さんを、首っ玉に縄をつけてでも、引っ張って来るように。

 早く来た方がいいよ、旦那が怒ってますから。 半纏出せ、お店に行ってくる。 何を怒っているのかな。 言っちゃあ、いけないって、言われてる。 言ってもいいけど、何か食いたい。 栗、出てる、五銭の。 皮を、こっちに捨てるな。 胸を叩くな。 番頭さん、暇をくれって、言ってた。

 遅くなりました、熊で。 悪気があったわけじゃないんで。 ご法事の時、燗冷ましの酒を捨てるっていうから、カカアが壺に移して、家へ持って帰った。 そうしたら、いい酒で。 三回で終った。 お店の酒、どうにかならないかってんで、カカアが毎日、顔出して、一合、二合。 蔵の中を片付けた時、大八車で樽を一つやった。 樽をやったのか、酒の話じゃない。

 沢庵の話ですか。 石が重いと、お清どんが言うんで、手伝って、三本、結わえてもらって、帰って食うと、うまい。 翌日、樽を担いで帰った。 知らなかったよ。 下駄の話で……。

 そんな話じゃない。 頼みたいことがあって、呼んだんだ。 危なかった、まだ三つあった。 三番蔵のことだ。 瓦がめくれてるので、上がって直せってんで。 雨漏りの話じゃない。 夜分、丑三つ時になると、化け物が出るという噂があるんだそうで、質屋稼業に障る。 向かいの離れの座敷で、見張ってもらいたい。 連れが要るという、ウチの番頭のご指名で、熊さんを呼んだんだ。 わかった、わかりました。 お前さんが、日が暮れると、腹痛になるのは、わかっている。 お清に言って、膳をあつらえて、酒も二本つけた。  番頭さん、先に行って下さい。 離れないように、二人で行こう。 夜なべで帳面を見ていたこともある。 ソーーーッと、開けて。 世の中で、一番嫌な物は、化け物だ。 箸がないんで、私が取ってくる。 自由行動は、控えて下さい。 番頭さんの帯のところをつかんで、付いて行く。 旦那は、まだ起きていた。 二人で、箸だけを取りに来たのかい。 仲良しの二人で。 私たちは、休みますよ。

 出た時、出た! と言って、逃げるか。 強がりを言っているだけで、食べるものの、味をぜんぜん感じない。 番頭は、飲めないのに、酒を飲む。 コックリ、コックリ。 丑三つ時、生温かい風が吹き、火の塊が、蔵の窓から、ドン! 二人の腰が抜けた。 おめでとうございます。 いざりながら、三番蔵を見る。 デンデンデンデン! 片やーーーッ 小柳ーーッ コナターーッ 釈迦ヶ嶽ーーッ はっけよい、残った、残った! 相撲取が、化粧回しを預けているんだ。

 すると掛け軸が、するすると下りて来て。 天神様、菅原道真公が現れた。 横丁の藤原様から、お預かりしている掛け軸で。 (鯉昇、手拭を杓に見立てて、捧げ持ち、)「東風吹かば匂ひおこせよ梅の花 あるじなしとて春を忘るな。 そなたは、この屋の番頭であるか、横丁の藤原へ利上げをするように申し付けよ、来る時に、また流されるといけない。」

瀧川鯉昇の「質屋蔵」前半2025/12/16 07:09

 去年の新年会の疲れが、まだ取れない。 何年か続く夏の暑さに、鞄がつかめない、熱中症だと言われた。 水分と塩分が足りないというので、塩をなめて、水をガブガブ飲む。 4、5時間で、手が開きっぱなしになった。 ジャンケンをする機会があれば、相手はハサミを出せば、間違いなく勝つ。 健診が変わっている、器械がよくなって、なんでもコンピューターだというが、何者かわからない。 聞けば、元の考え方は二進法だという。 ニシンといえば、北海道。 サンシンといえば、沖縄。 医者は、誤診法。 健診が早く終わって、病院で昼飯が出る。 お銚子は、つかない。 先生に呼ばれて、結果を聞く。

 頭のレントゲンを撮ったら、中身がない。 裏庭の景色が出る。 先月から、夜中にトイレに行く数が多い。 そして、一度も行かない日が来た。 何もやっていないのに、正常になった。 医者は、循環して排泄するので、循環しないのは、死んでる。 仮眠状態、冬眠しているんじゃないか、と。 そういえば、7日前から、ドングリが食べたくなった。

 名古屋で、一度亡くなったお婆さんが、十何時間後に生き返った。 葬儀の相談をしている最中だったので、みんな驚いたが、力を落とした人もいた。 お婆さんの話では、暗いトンネルの向こうに、針孔ほどの光が見え、それが出口で、目を開けたら、みんながいたと言う。 研究者がコメントして、これを専門用語で「生還トンネル」と言う、と。

 鎌倉から逗子に抜ける隧道に、27、8の幽霊が出ると聞いた。 聞いてから30年経つから、57、8になっているはずだ。 その隧道では、いつも大事故があり、全員死んじゃう。 その幽霊が出るという話は、誰から聞いたのか?

 番頭さん、お店(たな)のことが噂になっているそうだが、聞いてないか。 銭湯でみんな、私の顔を見て、話を止めるんだ。 丑三つ時になると、うちの三番蔵に化け物が出るらしい、という噂だ。 質屋の商売に障りになる。 一晩、三番蔵の前の座敷で、見張ってもらいたい。 私は当家に十二の年からご奉公してきましたが、お暇を頂きたい。 命あっての物種で。 質屋は、親の形見だなどという品物を預かっている、利息だけ払って期限を延ばす、利上げが出来なければ、泣く泣く流させざるを得ない。 そういう気が、集まっているのだ。

 背負い呉服屋が、長屋に品物を広げる。 見る正月、見る法楽だが、おかみさんが欲を出して、帯をもらいたい、と。 五円だが、家にない。 二か月先で結構。 亭主には三円で話をすると、もらっといたらよかろう、と言う。 差額の二円に困る。 寝酒の酒を薄めたりして、二円のヘソクリをつくり、帯を手に入れる。 亭主が青くなって、帰って来た。 どうしても二円足りないので、なんとか按配できないか、と言う。 帯を質屋へ持って行くだろう。 ウチの蔵には、そういう物が詰まっているんだ。 人間は、病の器(うつわ)という。 そのおかみさんが風邪を引いて、亭主が一日、二日、看病し、妹を呼んで来る。 食が細くなる。 駄目かしら、どんどん悪くなる。 形見の品、いい帯、質屋の蔵にある。 思えば、質屋が恨めしい。