好きなものを、使って楽しむ2006/02/18 07:03

 「極私的骨董入門」の第3回「目利き列伝―骨董を通して世界を見る―」で、 尾久彰三さんは、樹木希林さんを鶴川の武相荘に案内して、白洲正子さんの話 をした。 『知るを楽しむ』では今月“私のこだわり人物伝。”(火曜日)で、細 川護煕元首相が白洲正子さんを取り上げている。

 『白洲正子 私の骨董』(1995年・求龍堂)という本がある。 白洲さん愛蔵 の品々に、友人の所蔵品も加えた、藤森武さんの写真を主に、白洲さんの前書 きと品物についてのエピソードがついている。

 「自分が好きなものだけはわかる。それも頑としてわかる」(これは尾久さん が紹介していた)と、白洲さんはいう。 「好きなものと付き合っている間に、 骨董の方から教えてくれたの。五、六十年もやって、やっと骨董にも魂がある ってことを知ったの。その魂が私の魂と出会って、火花を散らす。といっても、 ただ、どきどきするだけよ。人間でいえばひと目惚れっていう奴かな。そして、 どきどきさせるものだけが美しい。ずいぶん色々のことを教えて貰った。あた しの欠点も、長所も、いかに生くべきか、ということまで。」 「中には重文級のものも交じっているが、私たちはそんな勲章には興味がな く、ただ同然の下手物の中にも同じくらい美しいものがあることを見て頂きた い。しいて珍しいというなら、それがこの本の新しさといえようが、民具を茶 の湯にとり入れたのは、室町時代の珠光や紹鴎もやっていたことで、その伝統 を現代に活かしてみたにすぎない。」

白洲さんのすごさは、それを実際の生活に使っていることだ。 惚れこんだ 物を、何としても手に入れて、そばに置いて、いじりまわし、一緒に生活して、 楽しみ、親しむ。