昇太の「人生が二度あれば」本体 ― 2011/05/05 06:20
過去を振り返ることが、時々ある。 年寄が泣いている。 ワシは今、何で 泣いていたんだ。 若い時は走って15分だった駅まで、今は2時間半かかる。 走ってみようかな、よーいドン。 ハアー、ハアー、死んでしまうかな。 20 メートル位しか、進んでいない。 手先を使うと、長生きするという。 何に でも興味を持つこともよいという。 蟻がいる。 蟻はどこへ行くんだろう、 つけてみようかな。 子供たち、ついて来るな。 新聞でも読むか。 芸能欄、 「春風亭昇太さん、人間国宝」、世も末だなあ。 盆栽でもいじるか。 一番最 初に買った盆栽だ。 パチン、パチン(扇子を鋏にして、枝を切る)、時々古典 落語の手法も使わないと、新作を馬鹿にする人がいる。
転勤した時、いつも行く店のお千代さんが、見送りに来てくれた。 窓の向 うだから聞えなかったけれど「待ってェー、行かないでェー」と、叫んだのか なあ。 お千代さんは、きれいだったから、一緒になったら幸せだったろう。 今のウチの婆さん、何の生き物かわからない。
子供の頃は、楽しかったなあ。 広場で遊ぶのが楽しかった。 人生が二度 あればなあ。 親の死に目にも、会えなかった。 出掛けに、柱に足の小指を ぶつけた。 母さん! 間に合わなくて、財産は兄弟がみんな持って行った。 「チェース! チェース!」白い煙が立って、「昔に戻してやろうか、松ぼっ くりを噛むと、戻る」というのが現れる。 お千代さんに会いたい。 白い前 掛けが可愛かった、と思っていたけど、今はそうでもないな。 叫んでるな、 補聴器、補聴器。 「ツケだけは、払って行ってェー」
子供の頃は、楽しかった。 広場で「ワーイ、ワーイ」(と、棒っきれを振り 回す)、「ワーイ、ワーイ」、つまらん。 母さんの死に目に、間に合った、大丈 夫だ。 「お前、よく来てくれたね、伝えなければならないことがある。財産 はお前には一銭もやれぬ。お前は父さんの子供じゃあない」 ワシは、一体、何で泣いているんだろう。
落語研究会の新作落語、2月の志の輔「みどりの窓口」がよかったので、昇 太もということになったのだろうが、物語の展開も、面白さも、今一だった。 このまま、50代、60代をやっていくのか。 マクラで自らが述べたように、 将来に不安を感じさせた。
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