雲助の「お初徳兵衛」前半 ― 2013/10/12 06:40
お古い噺、「船徳」のモトの人情噺だ。 古いものが、新しいということがあ る。 三道楽の一つに迷う。 傾城買い、芸者買いは、ちゃんと面白いように 出来ている。 はまると、夜泊り、日泊りになる。 徳兵衛が久しぶりに朝帰 りし、親父はウチは今忙しいのだ、吉原へ行くのは閑な時にしろと、叱る。 徳 兵衛は、三日会わねば花魁が死ぬと言っている、と。 親類一同集まって、親 を捨てるか、女を捨てるか、と問い詰める。 親を捨てます。 久離(きゅう り)切っての勘当となる。 金の切れ目が縁の切れ目、おばさんが出て来て、 花魁は泣いてばかりだと言うけれど、放り出される。 幇間の二階に居候し、 仕出し屋、置屋の二階と回ったが、ついに行き所がなくなった。 親類にも回 状が行き、むすび一つ渡してくれるな。 神社の縁の下で寝る。
柳橋で、舟遊びに出掛ける連中を見て、自分が持てていたのでなく、金が持 てていたんだ、と気付く。 生きていても甲斐がないと、両国橋から身を投げ ようとする。 平野屋の若旦那じゃあないですか、船宿の大松屋(おおまつや) の親方が声をかける。 世話になっていいのか。 平野屋さんには、ずっとご 贔屓にして頂いてきて、恩を返す時です。 親方、すまん。
痒いところに手が届くように、親切にしてくれると、気が詰まる。 親方、 折り入って頼みがある、船頭にしてもらいたい。 いけません、大身代を継ご うという、たった一人の跡取息子だ。 薬研堀の縁日で、番頭に会った。 家 では、夫婦養子をしたという。 若旦那のお耳にも入りましたか。 同じ一生 でございます、やれるだけやってごらんなさい。 若い衆にお披露目をして、 稽古を始めた。 大川はなかなか厄介で、川幅は広いし、川中は流れが速い。 掘割から大桟橋まで、二人の客を乗せ、大川に出て、二三度回り、御厩の渡し で渡し船にぶつかりかけて、船を引っ繰返しそうになった。 お客は、ようよ う岸に上がった。 按摩を一人雇って下さい、二貫の酒手に、一貫八百掛かっ た。
やがて、猪牙から屋根舟までこなせるようになった。 さんざん遊んだから、 洒落が言えて、話すことが面白い、徳さん、徳さんと、引張りだこになった。 四万六千日様、お暑い盛りでございます。 油屋の旦那が、お得意の天満屋ど ん、芸者のお初と、六千日様詣り。 女の足もある、大桟橋まで屋根舟を出し てもらいたい。 それは、女将さんの差配で。 徳さんは今、帰って来たとこ ろなので。 酒手は弾む。 すぐ仕度を。
ご機嫌よろしゅう、と女将が一突きするのも愛嬌で。 六千日様、大層なご 信心でございますな。 大増から、夜は吉原だ。 いや昼は吉原、夜は柳橋が いい、堀までやってくれるか。 いきなり裏手へいらっしゃるんで、まあ観音 様も、弁天様も、同じ神様ですから。 山谷堀からお初も上ろうとして、吉原 でほかの芸者を「びんつけ」と嫌がることに気づく。 でも、一人船頭、一人 芸者は、きつい御法度だ。 よろしゅうございます、姐さんを柳橋までお届け します。 お初は男嫌いで通っている、間違いはあるまい。 徳さん、頼む。 お帰りは、女将の方へ言っておきます。 酒手はその時に。 過分に頂戴しま す。
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