一朝の「蔵前駕籠」2015/04/11 06:45

 ニヤッとして、名前が一朝ですから、イッチョウ懸命やります。 こないだ、 やらなかったら、怒られた。 芸惜しみするな! あれは、芸なのか。

 時間短縮、けっこう旅をするんで、泊りの仕事が減った。 若い時、名古屋、 仙台、新潟、長野なんかは、泊りだった。 今は、つまらない、北海道だって、 日帰り。 仕事をやって帰って来て、夜中に目を覚まし、俺、どこへ行ったの かなんて思う。 飛行機、師匠の柳朝と一緒に、福岡へ行ったことがある。 初 めてだったので、緊張していると、顔色が悪いぞ、心配するな、アッという間 に着いちゃう。 揺れるんでしょうな? 屁みたいなものだ。 これが、揺れ た、揺れた、ポンコツの車で、悪い道を走っているようだった。 余裕かな、 と隣の師匠に話したら、ダマッテロ! 顔色が悪くて、しっかりつかまってい る。 林家、彦六師匠と北海道へ行った。 シンパイスルコタアネエヨ、落ち たって、下は雪だから。 柳朝師匠と、東北の方の温泉へ行って、湯に入った。  男女の風呂の間に、目隠しがあるだけで、お湯は通じている。 女湯に人が入 った気配がした。 師匠が、俺、見に行ってくる、ドボンと潜った。 しばら くしたら、戻ってきて、婆さんだよ、婆さん。 すると、隣のおじいさんが、 私の家内です。

 仕事で日本丸に乗った、いい、俗世間を離れた気分になれる。 急流下りが 大好きで、昔の猪牙舟に乗ってみたかった。 駕籠はどこへでも入って行けた。  宿駕籠と辻駕籠というのがあった。 宿駕籠はハイヤーみたいなもの、高い。  辻駕籠は流しのタクシー、安いけれど、早くは着かない、かつぎ手がくたびれ ている。 宿駕籠、江戸の三駕籠屋というのがあって、蔵前の江戸勘、日本橋 本町の赤岩、芝神明の初音屋、見栄のものだった。 日本堤の土手を、四手(よ つで)駕籠で、往きは飛んで行く、帰りは地べたを踏んで来た。 祝儀をはず まないと、威勢が悪くなる。 後から来た駕籠が、抜いて行く。 ブラブラ歩 く。 どうなってんだよ。 酒手の楽しみがないとね、一つ、いくつか色を。  グーッ、と狸寝入り。 駕籠いたぶって、起してやろう。 歯をくいしばって、 いびきをかく。 一分ずつ、やるよ。 土手にかかった、ほどなく門です。 こ ないだ乗った駕籠だが、乗りっぷりのお客だってんで、駕籠屋が一分ずつ、く れた。 こんどは、駕籠屋がグーッ。

 明日にも命がなくなるという時でも、江戸っ子は吉原へ行った。 私は、と てもそんなことはできません。 蔵前通りに黒覆面黒装束、故(ゆえ)あって 徳川家に御味方するという浪士の一隊が出る。 身ぐるみ脱げ。 襦袢だけは 許す。 有難うございます、自分の着物なのに、お礼を言う。 こんなことは、 襦袢にならない。 それで、名だたる駕籠屋は、暮六つになると、駕籠を止め る。 吉原の灯が消えた。 追剥が出る。 物騒でいけない。

 お前のところは、威勢のいい若い衆が揃っているっていう。 徒党を組んで、 出る、毎晩出る、昨夜は伊勢屋がやられた。 それは昨夜だろう。 今夜も出 ます。 お前、仲間か。 駕籠賃、倍払う、若い衆にも駄賃やる。 出る所ま で、行ってくれ。 俺、一人かみあう。 駕籠は、明日取りにおいでよ。 昼 遊びになさったら、いかがで。 身体張って、行けば、女が喜ぶ。 一晩中、 離さないよ、うずいてくる、行ってくれ、頼むよ。 何だい、二人、ヨクブト リ、ヘコハン、話を聞いて、涙ぐんでいる。 血気盛んな若い衆。 駕籠賃に、 祝儀をはずむ。 俺の方にも仕度があると、着ているものを全部脱ぎ、本畳み にして、布団の下に敷き込んだ。 サァ、やってくれ、とフンドシ一つになっ た。 身軽ないでたちだ。 寒いでしょう。 向うへ行けば、暖め手がいる。  女郎買いの決死隊だ。

 茅寺の所に、店出してる、トグロ巻いてる、待っていますよ。 駕籠を放っ ぽり出しますから。 待て、待て、待て、待て! 十五、六人が、バラバラっ と出て、故あって徳川家に御味方する者、軍用金に事欠いて居る。 近藤、龕 灯(がんどう)を、こちらに。 へッ、おう、もう済んだか。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
「等々力」を漢字一字で書いて下さい?

コメント:

トラックバック