日銀に依存しない経済・財政構造へ率直な議論を2018/08/12 08:07

 白井さゆり教授の講演、(4)2018年から始まった世界の異変、金融市場が抱 える懸念材料、そして結論である。

 まずは、アメリカの金融市場が不安定になっていることと保護主義的貿易政 策の影響だ。 安定していたアメリカの10年物国債金利が、2018年1月から 急に上がり始め、日米の金利差が開いた。 アメリカは3%前後、日本は0% 程度で、いま金利差がアベノミクス以来一番開いている。 でも、過去ほど円 安・株高になっていないのは、いくつかの要因が考えられる。 一つは保護主 義的貿易政策の影響で、トランプ大統領誕生で続いてきたアメリカの株高も、 少々高すぎる状況で、上昇傾向が止まっている可能性がある。 北朝鮮の問題 も、何が起こるか分からないリスクがある。 

日米の金利差と日本企業の高収益から、年内は一段と円安・日本株高が進む との見方がある。 しかし、年初からアメリカの金融市場が不安定化。 アメ リカの長期金利上昇により株価が下落すると、世界投資家がリスクを取りにく くなる。 その場合、円高・日本株安が進みやすい。

 2018年から、円・ドル為替相場や日本の株価は不安定な動き。 日銀は正常 化に向けた動きをとりにくいが、タイミングを逃すと一段と難しくなる。

 2019-2020年頃から日本や他の先進国の景気は減速すると見込まれる。  欧米は将来の景気減速に備え、金融政策の正常化に軸足を移している。

 長い将来を見据え、日本でも日銀の金融緩和に依存し過ぎない経済・財政構 造を目指し、率直に議論すべきときが来ている。

 締めくくりとして、白井教授が世界の経済・金融専門家などと議論している 金融政策の課題が紹介された。

 1. 大胆な金融緩和でインフレを引き上げる効果は、予想したほど大きくな かった。 通貨安・株価は上昇したが、副作用として、金融市場の不安定化が ある。 総合的な効果は明確ではない。 (アメリカ…率先して2%達成前に、 金融政策を正常化。 ユーロ圏…資産買入れを大きく減額し、年末か来年初め に終了し、来年利上げへ。 日本…国債買入れは減額しているが、依然、大量 の買入れを継続。10年金利目標引き上げやETF買入れの減額には踏み切れて いない。) ユーロ圏と日本の中央銀行は、ジレンマを抱える。 2%を達成で きず信認が低下するのを恐れるべきか? 金融の不安定化を恐れるべきか?

 2. 大量の国債買入れは、政府の債務負担を緩和。 しかし、将来、国債保有 を減らすと、財政赤字が拡大し債務返済能力が低下する。 金融政策の目的が、 「一時的な景気対策」から「財政ファイナンス」そのものに転換することにな らないか。 (中央銀行は保有する資産を減らす(金融政策の正常化)が難し くなる。 債務が大きい日本、ユーロ圏の周縁国は、備えができているのか?  一方で、日本は国内需要が弱く、政府の対外債務も少ないので、政府が国債発 行を増やし、日銀が買入れを続ければよいとの見方もある。 その場合、「金融 政策の目的」や「中央銀行の財務基盤の悪化への対応」について、今から検討 が必要ではないか。)

 白井さゆり教授の福澤先生ウェーランド経済書講述記念日の講演は、以上で ある。 長くなったが、経済の現状について、いろいろ勉強になった。