「東風」と「卒業」の句会2019/03/31 08:08

 いささか旧聞になったが、3月14日は「夏潮」渋谷句会があった。 兼題は
「東風(こち)」と「卒業」、私はつぎの七句を出した。
  東風吹いて庭の草花植替へる
  東風吹けばくしゃみ鼻水目に涙
  強東風や千波湖の面波立ちて
  東風吹かば通りゃんせの歌うたへ
  卒業を告げるリハビリ医は笑顔
  学ぶこと見付けし頃に卒業す
  沿線の景色流れて卒業す

 私が選句したのは、つぎの七句。
  東風荒れてがらんとしたる魚市場    裕子
  夕東風に霞む明かりや寺泊        真智子
  朝東風に行商媼(おうな)頬被り      同
  荒東風や鈴鴨同じ向きに浮く       和子
  腕ぴんと卒業証書受け取りぬ       同
  卒業子道一杯に広がれる         祐之
  卒業式校歌はかくもよきものか      耕一

 私の結果。 <強東風や千波湖の面波立ちて>を英主宰、<卒業を告げるリ
ハビリ医は笑顔>を正紀さん、<学ぶこと見付けし頃に卒業す>を英主宰と裕
子さん・耕一さん、<沿線の景色流れて卒業す>を英主宰と明雀さん・盛夫さ
んが採ってくれた。 主宰選三句、互選五票、合計八票、まずまずの成績だっ
た。

 主宰選評。 <強東風や千波湖の面波立ちて>…水戸、偕楽園から見下ろす
水戸らしい湖。「面」が損、要らない、リズムが崩れる。(私は後で、強東風や
千波湖のやや波立ちて、にしてみた)。 <学ぶこと見付けし頃に卒業す>…な
かなかほろ苦い、全員が同じように考えるのではないか、みんなが思うこと。 
<沿線の景色流れて卒業す>…好きな句。学校に通う電車、窓外に景色が流れ
る、もう乗ることはないかも知れない。そう、入学式の時にも新たな気持で乗
った。その間の全てが、心の内にあって、黙って、景色の流れるのを見ている。

 ほかに、私も選句した祐之さんの<卒業子道一杯に広がれる>についての主
宰の選評。 映像的、感情を殺して、見えた通りの景を詠むのは、俳句の一つ
のコツ。味わう時に、子供たちの姿が滲み出してくる。写生、ぶっきらぼうに、
やや乱暴に、無機質に、写生するのが虚子流のやり方。 同じく、祐之さんの
<夕東風の九十九里浜一宮>については、九十九里浜は南北に伸びている。日
が西に傾くと、西の山は翳り始め、東の海には光がある。何でもない句のよう
で、読む人はそうしたディテールが描き易い。感心した。

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