柳亭こみちの「堪忍袋」後半 ― 2020/08/19 07:26
隣、また始まったよ、止めて来いよ。 お前、行け、今月の月番だろ。 年かさの者が行かないと、収まりがつかない。
ヨーッ、石ちゃん、よく来たな。 おっかあ、お茶でも淹れな。 今、やってなかった? 鈴木の旦那に叱言を言われて、大金持になった話聞いて、堪忍袋をつくって、いい心持になって、スーーーッとしてる。 喧嘩しないのか? そのつもりだ。 寂しいね。 堪忍袋、俺にも貸してくれないか、ウチのかかあと喧嘩してたんだ。
やい、こん畜生、朝、なんで弁当をこしらえない、梅干一つだ。 文句言ったら、あくる日、梅干二つ、そういう話じゃない。 お前は芝居に行って、菊五郎や玉三郎がこっちを見たなんて言って、この馬鹿女――ッ! アッハッハ。 これ、いいね。 話を聞いて、長屋の連中、ちょっと貸して、ちょっと貸して。 ウチの嫁、おかずが塩ょっぱ過ぎます、私の口に合いません! 研究会の座席に座りたいです! 次の方、ワァ、ワァ、ワァ、貸して、貸して…。
日の暮れ、お前さんどうする、堪忍袋、パンパンになっちゃったよ。 お長屋の掃き溜めに捨てて来い。 大丈夫かしら、明日、鈴木の旦那が来たら、捨て場所を聞いてみよう。
ドンドン。 寅の野郎だ、酔っ払っている、たち悪い。 開けてくれ、明りを消したな。 熊さん! もう、寝ちゃったんだよ。 熊さん、聞いてくれ、こんな面白くないことはない。 宴会で、辰公が俺の仕事にケチをつけた、兄さんの仕事は古いですって。 ガキの頃からの(腕を叩いて)叩き上げだ。 私は大学の工科出てます、ってんだ。 コウカだか、セッチンだか知らねえよ。 青二才、張り倒したら、みんなで俺を羽交い絞めにして、ボコボコに叩かれた。 かかあに言ったら、熊さんの所に堪忍袋があるからって、貸してくれ。 明日、来い。 引っ張っちゃ駄目だ。 口がブツッ、バババババババババ、ブブブブブブブブブ、アーーッ研究会に行きたいヨーーッ!
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。
※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。