春風亭一之輔の「睨み返し」前半 ― 2025/11/12 07:19
暮がだいぶ押し迫って参りました。 いろいろ用事がありますが、最近はハロウィン、渋谷に無法者が集まる、109の屋上からゴルゴ30雇って、撃てばいい。 クリスマス、私の子供も小さい頃は、いろいろ欲しいと言っていた。 真ん中の子、五つか、六つの時、朝起きて、アーーッ! と、悔しがった。 デジカメ仕掛けたけど、写ってなかったって。 私が、七、八つの時、野球盤、大きな箱に入ったのが欲しかった。 お袋が、靴下吊るしとけと言うから、バスタオル二枚もらって、縫って、縫い目を裏返しにした。 12月20日、父が楽しみだね、と言った。 当日、入ってない。 状況として、どうなんだ、ずっとモヤモヤしている。 どう思うって、かかあに話したら、お父さんもお母さんもサンタさんを信じていたんでしょうね、と。 こういうセンシティブな話題、苦情が来ることがあるけれど、これ(落語研究会)は来ないでしょう。
12月の頭までに、手拭を染める。 高くなっている、台風で東南アジアの綿花の畑が駄目になっているって、毎年聞く。 二ッ目の時の、倍以上になっている。 交換するから、染める、どうすんのと思いながら、噺家の誇りでもあり、止めようと言う奴がいない。 時々、メルカリに出て、腹が立つ。 買い手がついてないのにも、腹が立つ。 原価より安く出てる。
暮になると、気忙しくなる。 掛売り、晦日払い、また来月となって、行き止まりが大晦日。 「大晦日、箱提灯は怖くない」(侍の箱提灯より、商人の弓張提灯が怖い)、「大晦日、首でも取って来る気なり」、「大晦日、首でよければやる気なり」、「大晦日、どう考えても大晦日」、「元日や今年もあるぞ大晦日」。
今、帰えったよ。 どこ、ぬたくってたんだ。 蛇じゃない。 のべつ幕無し、来てんの、夜分には払います、と言っている。 出来ましたら払いますと、出来ましたらを入れるんだ。
こんばんは、薪屋です、お忙しゅうござんす。 (返事をしない、何度か呼びかけて、戸を開けてみる) いたんですか。 いたよ。 返事がない。 返事しないよ、お忙しゅうって、俺んちじゃない、お暇なら俺だ、かたずいたんで。 閉めて、何か用か? 今日は大晦日。 本当かい、お前んとこもか。 お勘定を。 お勘定ねえ、くれるの。 取りに来たの、早く言ってくれよ。 取りてえのか、こちらも払いてえとは思っている、そこまでは気が合う。 そこには、深くて長い川がある。 飛び込んで来い。 しかし、ない。 ない袖は振れない、駄目だよ。 払えないものは、払えないんだよ。 ずうずうしいんだよ、申し訳ないけれど、今はないんで、春まで待ってくれとか言うなら、帰りますけれど。 それで、いいよ。 (怒って)上がってくんな。
勘定払ってもらうまで、ここを動かねえ。 怒ったってしょうがない、江戸っ子だねえ。 俺も、江戸っ子だ。 受け取るまで、五分だって動かねえ。 かかあ、薪ザッポ持って来い、ゴツゴツしたやつ、動くなよ。 ウチの薪だ、動かねえよ。 待ってろ。 払ってくれよ、どこ見てんだよ。 うるせえ、今、算段してんだよ。 長いことは、駄目だよ。 何とか早くこしらえたいが、どう見ても半年はかかる。 貧乏だから、炊き出しなんかできねえ、死んだら、死骸ェぐらい店に届けてやるよ。 四、五日前、往来で会った、プイと横を向いた、取らねえつもりだな。 どうかしているよ。 ほかもあるから、行くよ。 行けよ、払ってないんだから、座ってろ、俺も目障りだが。 行くよ。 行けよ、動いたらボカン! 行くよ、それ置いて。 動いたらボカン! 受け取るまで動かないって、お前、言ったんだろ。 どうしたい。行きたいんだろ。 弱ったな。
どうしても動きたいなら、勘定取ったか、決めた方がいいよ。 取ったか、取らなかったか。 座ってろよ。 じゃあ。もらった。 何をもらった? 勘定。 いつ? ちょっと前に。 どこで? このへんかな。 いや、嘘、俺勘定払ったっけ、物忘れがよくて。 頂いたんじゃないですか。 そうか、なんだか払ったな、おい、受取を置いてけよ。 放るな。 金二円八十銭也。 俺も忙しいんだから、勘定は早く取りに来てくれよ。 判が捺してない。 あんた、本気で言ってるの。 こんな情けないことはないと、泣きながら、判をペタペタ捺す。 昨夜の夢見がよくなかったんだ。 トランプが花札してた。 商人なんだから、勘定もらったら、大声でありがとうございますと言え。 ありがとうございます。 はい、こちらこそ。 薪屋さん、さっき渡したの、たしか十円札だ、まだ釣りをもらってない。
なさけないよ。 お前さんのこと、味方にしといてよかった。 春になって、勘定ができたら、払いに行くよ。
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