柳家小満んの「よかちょろ」2025/11/11 07:07

 「よかちょろ」は、「山崎屋」のとっつきを、初代三笑亭遊三が独立した噺にしたもの。 この人、落語家になる前は、函館で裁判官をしていたが、姦通事件の裁判で、被告の美人が秋波を送り、笑って、ポロッと泣いたので、無罪にして、免職になった。 それで幼友達で落語家になっていた円遊に弟子入りして、落語家になった。 色っぽい噺が上手かった。

 円遊は、人気絶頂、立って踊る。 噺家は、税金を払ってないからと、立って踊るのは禁止、座り踊りだった。 じんじんばしょりして、ステテコで踊る「♪ステテコ、テコテコ、あんよ叩いてしっかりおやりよ、そんなことじゃ、真打にゃなれない、ステテコ、ステテコ、ごろにゃんにゃん」。 そして、大きな鼻をちぎって、ポイと投げる、ふりをする。 寄席を、14,5軒人力車で回って歩いて、花柳界のお座敷へ、行かれない所へは電話口でやる、という人気。

 こうした珍芸の一つに、談志の「郭巨の釜掘り」があった。 幇間の真似で、中国の二十四孝の一つ、郭巨という男が母に孝行する邪魔になるのでと、我が子を穴を掘って埋めようとしたところ、金の釜を掘りあてた故事にちなむ。 座布団を折って、赤子に見立て、抱き上げて立ち上がり、「♪この子がいたんじゃ、浮気ができない、テケレッツノパァ…、アジャラカモクレン、キンチャンカマール、座席喜ぶ、テケレッツノパァ…」。

 ヘラヘラ坊萬橘は、赤い羽織に、赤い手拭で頬っかぶりして、「♪ヘラヘラヘッタラヘラヘラヘ、小田原過ぎたら、箱根駆け上がり…」なんて唄う。 忙しいので、寄席を通り抜け、人力車で行く。

 平兵衛や、番頭。 お呼びでございますか。 若旦那、一昨日出たきり、帰って来ない。 お前が最近は真面目になったので、おやりあそばせと言ったんで、与田さんの掛け金二百円を取りに行かせた。 番頭、あれでは困るな。 あれでは困ります。 たまにはいいが、のべつとは、どういう料簡なんだろう。 たまにはいいけれど、のべつとは、どういう料簡なんでしょう。 番頭、お前は、私の真似ばかりしている。

 馬鹿野郎が、帰って来たら、わしのところに寄こすように。 若旦那、今日は伺いたい。 花魁と旦那とどっちが大事なんですか。 花魁は赤の他人、たった一人の男親と、どっちが大事か、決まっているだろう。 表向きはそうだが、花魁の方が大事だ。 親父は、抜け殻だ。 花魁は、馬鹿な惚れ方、花魁がね、若旦那とは星が合うと言うんだ。 若旦那の星は、梅干ですってんだ。 あなたを好いているから、梅干ですよって。 わかりました、お父っつあんのところへ、行って下さい。 親父に意見をしよう。

 親父、打たれても、私の体じゃない。 半年の間、花魁から預かった体だ。 一緒になりたいけれど、お金がかかる、半年経てば自由になれるから。 その代り、あなたの体は私のもの、怪我などしないように、ってんだ。 三日目には、顔を見たくなる。

 番頭! 番頭! (煙管を持って)お前が頭を出せ。 ポカリ。 お父っつあん、ごきげんよろしゅう。 お前は、抜け殻のおかげで、遊び惚けていられるんだ、二十二にもなって。 与田さんの二百円、どうした? 十円札で二十枚、受け取りました。 落としたのか? 落とす気遣いはない。 馬鹿にされて使ったんだろう、天が許さない。 馬鹿にされて使ったんじゃない、筋道のある金の使い方。 負債か、投資か? いいえ。 負債じゃなく、投資でなきゃあ、何だ? 申し上げた方がいい、誤解がなくていい。 道楽してきて、親に勝とうとする。 では、髭剃りを五円。 三十銭、五十銭で、床屋が何から何までやってくれるだろう。 吉原では、花魁の十二畳の座敷に、百三十円の舶来の鏡があって、友禅の座布団に座る。 花魁が、髪を湿してくれる。 高いな。 話の情愛というもので。

「よかちょろ」に、四十五円。 舶来物か? 舶来物でなく、お座敷向きで、今は安くて、儲かる、これから流行るだろうと、仕入れました。 そうか、さすが商人、蔵はいくらでも空いている、どんどん仕入れろ。 どんなものか、見たかったな。 ご覧に入れましょうか。

 (手を打って)「♪女ながらも、まさかのときは、ハッよかちょろ、主に代りてェ玉ァ襷ィ、よかちょろ、すいのすいの、して見てしんちょろ、味を見ちゃ、よかちょろ、しげちょろ、パッパー」。 婆ァさん、笑うんじゃない。 こんなものが、二十二年前に飛び出した。 お前の畑が悪い。 あなたの鍬だって、悪い。 さりとは狭い御料簡、褒めやしませんが、コウ坊は、お金盗んで行ったわけじゃない、店の金、うちの金よ。 お父っつあんと、コウ坊は、歳が違う。 あなたと一緒になったのは、あなたが二十二で、私が十九、三つ違いでした、今でも三つ違い…。

 若旦那がご勘当になる、「よかちょろ」でございます。