以前「線状降水帯」は、なかったか? 豪雨と温暖化 ― 2026/09/11 07:14
千葉の豪雨災害があり、7日は東京も豪雨予測で世田谷区でも学校が休校になった。 以前は聞かなかった「線状降水帯」という言葉を、よく聞く。 神里達博さんの「月刊 安心新聞+」(朝日新聞8月26日朝刊)で、「線状降水帯」という用語が使われるようになった事情を知った。 神里達博さんは、1967年生まれ、千葉大学大学院教授、専門は科学史、科学技術社会論。
気象学は、20世紀後半から、観測データの充実とコンピューターの性能向上により、長足の進歩を遂げている。 集中豪雨の降水量も、地図上の細かなメッシュごとに把握できるようになった。 その結果、1980年代頃から豪雨の多くが線状の降水域で起きていることが分かってきた。 そして2000年前後に、九州地方でしばしば生じる線状の降雨帯を、研究者が「線状降水帯」と呼ぶようになった。 その後、2014年の広島土砂災害の報道でも使われたことで、この用語が一般化したとされる。
つまり、自然現象自体は以前から存在していたと考えられるが、私たちがその存在を認識できるようになったのは比較的最近、ということだ。
豪雨は、どんなメカニズムで生じるのだろうか。 通常、雨を降らせる雲は、大きく乱層雲と積乱雲に分かれる。 前者は一日中「しとしと」降る長雨をもたらす。 そして後者は、局地的な大雨の原因となる。 夏によく見る入道雲は、成長しつつある積乱雲の姿だ。
もっとも、一つの積乱雲の寿命はせいぜい1時間である。 湿った上昇気流で雲は成長するが、降雨が始まると冷たい下降気流が生じ、湿った空気の上昇を遮ってしまうからだ。
ところが、いくつかの気象条件が重なると、積乱雲が「世代交代」し、次々と同じ場所に生じるようになる。 その結果、激しい雨が何時間も同じ場所で降り続くのだ。 これが「線状降水帯」の「正体」である。
こうした豪雨は最近、起こりやすくなっているのか。 そしてそれは、地球温暖化の影響なのか。 以前は、この種の問いに厳密に答えるのは難しかった。 だがここ数十年で、状況は変わった。 それはイベント・アトリビューション(EA)という技術が飛躍的に発展したことによる。 その方法の概略は以下の通りだ。 まず、二酸化炭素が増えている現実の地球と、温暖化しなかった仮想の地球の気候モデルを計算機の中に作る。 そして計算を繰り返し、「あり得たかもしれない天気」を多数、シミュレーションで作り出す。 その上で両者の豪雨の発生確率を計算し、比較するのだ。 たとえば「平成30年7月豪雨」について計算を行うと、温暖化の結果、大雨の発生確率が約3・3倍になっていたと推定された。 やはり温暖化の影響で豪雨は起こりやすくなっていると考えられる。
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