市馬の「喜撰小僧」さん喬の「木乃伊取り」2005/09/05 08:27

 柳亭市馬の「喜撰小僧」もあまりやらない噺だが、骨格はよくあるやつで、 大店の旦那がお妾さんを囲っているらしいと気がついたおかみさんが小僧の定 吉にあとをつけさせる。 お妾さんに利発な小僧さんだと、一円の小遣いとあ んころ餅のお土産までもらい、旦那には山田さんのお宅で碁を打って泊まりに なると言えといいつかる。 お土産のあんころ餅を、番頭が先ず食べ、なめな いで下さいといわれて、なめるというのはこうやるのだとベロベロやるところ が、可笑しい。 市馬はだいぶ腕を上げ、特にこの手の噺をやると、調子がよ くて楽しい。 おかみさんの肩を叩かされた定吉が、ポロッとしゃべって、「私 を茶にしたね」「今やりましたのが喜撰でございます」という落ち。 

 柳家さん喬の「木乃伊取り」、集金を持ったまま行方不明になった若旦那、吉 原の角海老にいることがわかった。 迎えに行った番頭の喜十郎は五日帰らず、 おばあさんがそれなら頭(かしら)の佐平がいいという。 呼ばれた頭、蔵のこ とか、長屋の根じめの用かと、決めてかかって、なかなか若旦那の話にならな い。 でも「くさった半纏」をもらっているからと口をすべらし、刺し子に着 がえて出かけるが、途中で会った幇間の一八と、角海老で再び会ったからたま らない、ドガチャカとなり七日帰ってこない。 勘当だといきまく旦那におば あさん、あなたも吉原には行かなかったけれど、家に来た女中にはみんな手を つけて…、と言う。 堅物で腕力も強い、まんま炊きの清蔵の出番となる。 そ の堅物が酒と女に、じょじょに崩れていく面白さ。 この日のさん喬、一皮む けたか、例のちょっと気取った嫌味がぬけて、とてもよかった。

 帰りがけ、友達に「何で木乃伊と書くの」と訊かれた。 帰って調べ、ミイ ラはポルトガル語のmirra、「木乃伊」は英語のmummyの漢訳語と判った。  友達に知らせると「英語の「カアチャン!」(このスペルもある)と「ミイラ」 が同じ綴り、同じ発音とはこの歳になって初めて知りました」という返事が来 た。