就学援助4年で4割増 ― 2006/01/08 09:43
貧しい暮しの中から、苦労して子供を大学にやる『二人で歩いた幾年月』を 見て、すぐ思ったのは、正月早々、ショックを受けた新聞記事だった。 3日 の朝日新聞朝刊のトップ、「就学援助4年で4割増」「東京・大阪4人に1人」 という見出しの記事だ。 「就学援助」は、経済的な理由で就学に支障がある 子どもの保護者を対象に、公立の小中学校での文房具代や給食費、修学旅行費 などを市町村が援助するもの。 保護者が生活保護を受けている子ども(要保 護)に加え、市町村が独自の基準で「要保護に準ずる程度に困窮している」と認 定した子ども(準要保護)が対象になる、という。 文部科学省によると、「就学 援助」の受給者は04年度が全国で約133万7千人。 00年度より約37%増え た。 受給率の全国平均は12.8%。 地域的な偏りも目立ち、都道府県で最も 高いのは大阪府の27.9%で、東京都の24.8%、山口県の23.2%と続く。 背 景にはリストラや給与水準の低下がある、という。
刈谷剛彦東大教授(教育社会学)の談話が、的を射ている。 「塾に1カ月に 何万円もかける課程がある一方、学用品や給食費の補助を受ける子どもがこれ だけ増えているのは驚きだ。教育環境が、義務教育段階でこんなに差があって、 次世代の社会は、どうなってしまうのか。今後、自治体が財政難を理由に切り 捨てを進めるおそれもある。機会の均等もなし崩しになっては、公正な競争社 会とは呼べない。」
貧困がこれほど広がっていたのか。 『二人で歩いた幾年月』の時代に戻っ たかのようだ。 日本社会が二極化、リスク化していくと指摘した、山田昌弘 東京学芸大教授の『希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く』(筑 摩書房)や、生きる意欲の乏しい若者たちから「下流」と呼ばれる階層が生れて いることを指摘した、三浦展(あつし)さんの『下流社会―新たな階層集団の出 現』(光文社新書)という本も売れているらしい。 注視していく必要のある動 向だと思う。
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