三遊亭鬼丸の「猿後家」2011/04/05 07:10

 三遊亭鬼丸(おにまる)、鶏冠(とさか)のような頭とダイダイ色の羽織の紐 が目立つ。 円歌一門、昨秋きん歌から鬼丸になった。 歌のつく名前は、歌 丸一門にもいて、取り合い状態になっている、カラオケボックスのような。 歌 九(うたきゅう)はどうだろう、間違えて客が入るかもしれない、と師匠に言 って、怒られた。 信州上田市出身なので、真田幸村の幸から、歌幸(かこう) はどうだ、と師匠。 下降はいや、じゃあ「こうか」は、便所だ。 この人、 当てにならない。 で、鬼丸になった、180年前の古い名前。 4月1日で、 入門から丸15年になる。

 「猿後家」は、大店の後家さん、お金にも、身の回りにも、不自由はないが、 ただ一つ、顔が不自由で、気になる、猿に似ているのだ。 店の者、出入りの 者は、細心の注意を払い、「しなさる」はダメ、「えてして」もダメ。 善さん が行くと、家の中でふさぎこんでいる。 三日前、植木屋が代替わりして、息 子が来た。 空いている所に何を植えればいいかと聞くと、「サルスベリがいい」 と言った。 植木屋ふぜいが、と怒鳴りつけると、頭に来て、「柿の木を植える から、おにぎりでも食いやがれ」と、言ったという。 ゼニの欲しい善公、お かみさんをお千代さんと見間違えました、と言う。 お千代さんは京女で、今 年18。 まだ化粧前ですか、化粧をしたら小野小町のような美しさになる。 お 清、うなぎに、お酒。 カカアの親に東京見物させて、銀座へ銀ブラに行った けれど、余りきれいな人はいない、おかみさんと比べるから。 清よ、白焼き もつけて、天ぷらも、一番高いの。 その後、浅草へ、親がお祭かいという混 雑、雷門の所に人だかり、中を覗くと、「猿回し」をやってんの……、アレ。 善 公、二度と来るんじゃないよ。

 馬鹿、それ言ったのかい、と番頭さん。 ウチじゃあ、初歩の初歩だよ。 出 入りの職人は、そそっかしいのが多いんだから。 仕立屋の太平、母親代わり で娘のお遊戯会を見に来てくれ、と言ってきた。 昔話で桃太郎、役は家来だ という、三つに一つ、案の定、その一つ。 私に嫌味を言いに来たのかい、と なった。 あいつはえらい、口で取り返した。 ひと月くらい経って、無精髭 に汚い着物で来て、臭い話をした。 この土地を離れ、旅をしていたら古道具 屋で、お店のおかみさんにそっくりの錦絵を見つけた。 この世のものとも思 えない美人、この絵に魂を入れて下さい。 まあ、これは鏡じゃないのかい、 うなぎ三人前取って。

 おかみさん、開けますよ。 急に怒りましたね。 何で怒っているんだか、 わからない。 雷門の人だかり、中で何をやっていたかっていうと、「皿回し」。  ふーん、そう。 親に、おかみさんにそっくりの錦絵を買ってやった。 これ です。 鰻屋、一軒持たせてやろう。 すごいね、お前、太平が持ってきたの と、同じだ。 いえ、ほんの猿真似でございます。

 たくさん書いたのは、三遊亭鬼丸が、なかなかよかったからだ。

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