柳家小傳次の「粗忽の使者」2015/10/02 06:36

 喬之進改メ柳家小傳次、さん喬の弟子、3月に真打になり改名した。 袴姿 で出て、落語研究会は三度目の正直、喬之進で前二回撃沈した、笑わせたい、 と。 「きゃりーぱみゅぱみゅ」、正式には「きゃろらいんちゃろんぷろっぷき ゃりーぱみゅぱみゅ」は、噛まずに言える。 その感じで、ゆっくり、落ち着 いてやればいい。 「まめで、そそっかしい」のと、「不精で、そそっかしい」 のとがある。 「まめで、そそっかしい」のは、言葉が出ない。 湯へ行くの に、湯という言葉が出ない、ようやく湯が出て、湯へ行くから鉄瓶出してくれ、 鉄瓶じゃなくて手拭、それから踏み台……、踏み台じゃなくて風呂代。 「不 精で、そそっかしい」のは、黙って、鉄瓶下げて、湯へ行く。

 杉平柾目正(まさめのしょう)という大名が、家来で粗忽者の治部田治部右 衛門を、親類の赤井御門守と謀って、戯れの使者につかわす。 治部右衛門は、 出かけるのに、「べんとー」「べんとー」と、別当を探し、豚を引け、牛を引け、 いや馬だ。 怪しのものだ、首がないぞ。 向きが……、どうぞ、お乗り換え を。 わしが跳び上がっている内に、馬の向きを変えろ。 そうは参りません、 どうかお乗り換えを。

 大工職人は少し離れるようにと、お使者触れがある。 何、笑ってんだ。 ヒ シャが来るってんで、キョウスでも来るのかと覗いていたら、裃が曲がってい る、変なお使者が来た。 田中様が「拙者は当家の家臣田中三太夫」と名乗る と、そいつも「拙者は当家の家臣田中三太夫」と言いかけて「では、ござらん」 と言うんだ。 お使者のご口上を、と聞かれて、真っ青になった。 脂汗を流 して、ご口上を忘れた、と言う。 ご冗談を、一個所でも、憶えているところ は? 一個所も憶えているところは、ござらん、お詫びに満腹じゃなくて、切 腹しなければ…。 幼少の頃から、ケツをひねられると、忘れたことを思い出 す、ご貴殿、ひねって下さらんか。 俺は、侍のケツを初めて見たよ。 田中 様が、ひねった。 もはや、おひねりで……、もそっと力を入れて。 それで も、思い出さない。 「指先に力量のある御仁」を。 大藩のことだ、力士を 雇ってでも、ということになった。 それで、俺が行ってくる。 田中様は柔 の先生、三人力だぞ、その田中様がだめだったのに、お前にできるのか。 釘 抜き、エンマ(昔はペンチの形、閻魔様は嘘つきの舌を抜いた)でやる。 ま かり間違えれば、腹を切るってんだ、何とかしたい。 親父にガリ食わねえよ うに、うまくやっといてくれ。

 まっぴら、ごめんねえ。 ぴらぴら、言っている奴がおる。 田中三太夫さ んにお目にかかりたい。 職人が何だ、作事場へ回れ。 先ほどのを見てまし て、あっしが行ってひねってみましょうか。 丸太に打った五寸釘でも引き抜 く。 火急のことゆえ、当家の若侍ということにするか、紋服に、帯は神田結 び、後ろ前を穿いた袴、窮屈袋を穿き直す。 言葉は丁寧に、頭に「お」の字、 しまいに「たてまつる」をつけるように。 「おったてまつる」か。 名は何 と申す? トメッコ。 田中を裏返して中田、名は留太夫、中田留太夫としよ う。 田中三太夫に中田留太夫、三河万歳みたいだな。

 中田留太夫殿、これへ。 (呼ばれてもわからず、やむなく三太夫)トメッ コ。 おこんちはで、おったてまつるでござる。 (三太夫に席を外させ)お い、おじさん、間抜けな野郎だ、俺は出入りの職人で「指先に力量のある御仁」 だ、ケツ出しな、ひねってやるから。 よろしくお願いいたします。 汚たね えケツだな、毛むくじゃらで。 いくぞ、どうだ! あっ、冷たいだけで、も う少々手荒く。 固えケツだな、どうだ!コレで!  アアッ、えけえ力量で、 痛さ耐えがたし、思い出してござる。 して、ご使者の口上は? 屋敷を出る 折、口上を聞かずに参りました。