絵本『湯めぐり一番 道後の温泉』2005/09/08 08:15

 カザルスホールに入る時、藤原一枝先生・文、高橋幸子さん・版画、8月20 日発行の新刊絵本『湯めぐり一番 道後の温泉』(藤原QOL研究所)をいただい た。

 伊予に住む働き者の「まどかな」カラスの楽しみは、一日働いて町の温泉で 一浴びすることだった。 冬、白ヤギの郵便屋さんが届けてきたのは「五匹」 「温泉に行く」差出人「東京セントウ」しか読めない謎のハガキ。 やって来 たのは、鶴と亀と竜(たつ)と熊と鳩、りっぱな身なりで、みんな浮かぬ顔。 東 京の銭湯「鶴の湯」「亀の湯」「竜の湯」「熊の湯」「鳩の湯」の持ち主たちだっ た。 長い首も回らぬ鶴、しかめっ面の亀、立つのもやっとの竜、熊は目の下 に大きなクマ、鳩は胸が張り裂けていた。 それが道後の温泉に入ると「極楽、 極楽」、大きな熊がおかしくなって噴き出して、口と反対側の方からも、「ブワ ーファファファファー、ブーーー、ブファファー」。

 藤原一枝先生の文には、川崎洋さんに共通するユーモアや言葉遊びがある。  「まどかな」故郷を愛する先生の気持があふれている。 「風といききし」と いうサブタイトルされた会の、「硬直しがちな心身に、風を送り込むようなもの であってほしい」という先生の願いがこもった、暖かい絵本であった。

 三年前、福澤諭吉協会の旅行で道後の温泉に行った時、松山市の俳句ポスト に

   冬近しぼっちゃーんと入る道後の湯

という自信作を投句してきたのに、音沙汰のなかったことを思い出した。