小満んの「羽団扇」前半 ― 2016/01/08 06:40
あばら家にとんで火に入る霰(あられ)哉 一茶。 「初昔」なんて季語が ある。 元日に、大晦日をもう一年前の昔になったんだなあと思い出したりす る、「去年今年」と同じだ。 往来に一斗の酒を尽くしけり(?)。 一斗樽年 賀の宴に飲み尽くし。 生酔ひの礼者を見れば大道を横すじかいに春は来にけ り 蜀山人(四方赤良)。
「宝船」、初夢を見るために枕の下に敷いた縁起物を売りに来た。 駿河半紙 に木版で(?)、七福神の宝船を描き、一富士二鷹三茄子や、「ながきよのとお のねぶりのみなめざめなみのりぶねのおとのよきかな」の回文歌が書き添えて あったりする。 借金が富士の山、為すも成せない、空見たことか。
お前さん、ずいぶん酔っているじゃないか。 年始の酒だ。 飲みてえ、外 は外、内は内だ、<元日やおのが女房にちょいと惚れ>ってな。 枕の下に宝 船敷いて、早く寝てちょうだい。 いい夢見たら話して、こぼれ幸いっていう から。 寝間着着て、ちゃんとおしっこして。 子供じゃないよ。
もう、寝ちゃつたよ、笑ってるよ、鼻から提灯出したり引っ込めたり、お祭 が夕立にあった夢でも見てるのかしら。 助平ったらしい顔、女の夢を見てる んだ。 お前さん、どんな女だった? そんな夢、見てねえよ。 連れ添う女 房に夢の話もできないのかい、何年一緒になってんだよ。 いい加減にしやが れ。
おい、ちょっと、ここを開けろ。 どなた様で。 鞍馬山の天狗だ。 町内 の行者さんに、ご祈祷かなんか頼んだのか。 江戸の正月を見たいと思って来 た、夫婦喧嘩の仲裁をしてやろう。 天狗様にお茶を差し上げろ。 喧嘩のも とは何だ。 二日の日に初夢を見て、女と何をしたって、話をしない。 おか みさん、それは無理というもんだな。 それを強情張って。 おかみさんに証 拠をつかまれているのか。 不公平な仲人(ちゅうにん)なら、帰れっていう のか、帰るが、連れて行くぞ。
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