山田洋次監督、92歳の果たせぬ夢 ― 2023/10/02 07:01
山田洋次監督は、撮影開始にあたって、100人を超えるスタッフに、こんな話をした。 「昔から映画に「艶(つや)」があるということが言われた。「艶」とは何か。スタッフの気持、その映画に寄せた気持が、その映画作りに皆が抱いていた喜びが、画面に不思議に出る(映る)のが映画だし、それを信じなきゃいけない。」
「映画には、魂が映る。魂があるかどうかっていうのは、いちばん大事なんじゃないかな。どんだけその作品に愛情を持っているか。どれくらいその映画を大事に思って作ったかという。それが必ずフィルムに映るんだということを信じなきゃいけない、監督ってのはね。」
山田監督は『プロフェッショナル仕事の流儀』のカメラに向かっても、こう語った。 「映画を見終わってね、ふと観客が大笑いしても、涙を拭いてもいいんだけども、ふと元気になるっていうかな、『明日からまた俺も頑張っていこう』って思うような映画を作れば、文句ないね。さらに言えば、『ああ笑った、笑った、腹減っちゃった』、そんなふうに人を笑わせる映画を作れれば、もっともっと、夢だね、僕のね。果たせぬ夢です。」
今年2月28日、『こんにちは、母さん』、身内の完成試写会に、風邪で欠席した山田監督の挨拶。 「映画作りは、いつでも後悔の塊のようなものです。演出はミスだらけ、演技だって完成にほど遠いことは、俳優さんご自身がいちばん感じているところだろうけど。しかし、それを超えたもの、何か願いとか祈りとか、そんな種類のことが、作品全体から匂ってきてはいないだろうか。というようなことを、僕はひそかに思っています。」
『こんにちは、母さん』のラストで、福江の吉永小百合は、美しい笑顔で、こう言い放った。 「しょうがない、母さんの出番だね。悲しんでばかりいる場合じゃないね。」
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