春風亭一朝の「百川」後半2026/05/19 07:09

 バチバチバチバチ!  ヘェーーイ! 百兵衛さん、もういっぺん行って来てくれ。 今度は、カネの火鉢でも呑まされたら…、奉公も命懸けだ。 ウッヒャッ! また、来たよ。 御用を伺わなければ、なんねえ。 あんた、もしかして、ここの奉公人かい? 百兵衛と申します。 あっそうか、違ったんだ、四神剣の掛け合い人じゃなくて、主人家の抱え人だったんだ。 はっきりして、よかった。

 じゃあ、使いに行ってもらいたい。 長谷川町の三光新道に、常磐津の亀文字という名高いのがいるから、呼んで来てくれ。 先生ですか? 先生じゃなくて、師匠だ。 河岸の若いもんが四、五人来ているって言って、箱(三味線箱)を、担いでくればいい。

 ここは、長谷川町の三光新道ですか? そうだよ。 ここで「か」の字のつく名高い人は? 鴨地さんだろう、鴨地源仁、外科の先生だ。 そうでございます。

 どーーれ! 先生、浮世小路の百川から使いが来ました。 河岸の若い方が、今朝がけに四、五人来られまして。 何、河岸の若い者が四、五人、袈裟懸けに斬られた? 喧嘩か。 わかった、すぐにお見舞い申す。 手遅れになるといけないから、焼酎を一升、白布を五、六反、鶏卵二十個を用意しておくように、薬籠を持って行け。

 すぐにお見舞い申すと、手遅れになるといけないから、焼酎を一升、白布を五、六反、鶏卵二十個を用意しておくようにと、おっしゃって、箱はこれに。 三味線にしちゃあ、小いせえな。 最近は、四つ折り、五つ折りなんてのを、こしらえたんだ。 焼酎をやって、白布は腹に巻き、玉子で喉を整えるんだろうが、常磐津で「手遅れ」とは、聞いたことがない。

 鴨地先生! 怪我人は、どこだ? 袈裟懸けに四、五人斬られたという。 わしの薬籠が来ておるだろう。 皆様、先生がみえて、嬉しかんべえ。 間抜け、ドジ! ウッヒャッ、どのくらい抜けてますか? てめえなんか、そっくり抜けてらあ。 たんとじゃあない、カメモジとカモジ…、たった一字だけだ。