桃月庵白酒の「禁酒番屋」 ― 2025/11/08 07:13
白酒は、黒紋付の着物にピンクの羽織、そろそろ年末、忘年会シーズン、と始めた。 多様性というのか、様変わりしているそうで、簡単に決められない。 酒飲みたくない、ソフトドリンクもないと。 鍋、魚は、駄目だとか、スイーツを食べたいのもいる。 いろいろ考えて行くと、ガストしかない。 結局、おのおの仲間うちだけで、好きな所へ行き、8時に会社に帰ってくる。 15年後また、みんなで鍋をつつくなんてことになるか。
昔コンビニでバイトしていて、バイトリーダーとか言われ、客が品物をカゴに入れるのを見ながら、レジを見ずに打ち始めることができた。 今は、レジの横にカゴを置くだけで、計算するから、そんな技は不要になった。
噺家は、打ち上げに誘われる。 コロナ以後変わった。 半分以上、酒飲まない。 小三治、文朝なんて師匠は飲まなかった。 酒を飲むと、最初は和やかだが、芸談、悪口になる。 柳家のくせに、古今亭のくせに、林家は馬鹿にうるさい、とか。 噺家は声がでかいので、店の中に響き渡る。 喧嘩だ、表に出ろということになるが、出てもやることはない。 小咄のやりとりなんかして終わる。
ある藩で、諍いが起こり、ただじゃ済まなくなって、腰に人斬り包丁を差しているので、刃傷沙汰となった。 殿様が怒って、一同禁酒となった。 困ったのは、家中の酒飲み、城下の酒屋。 お調子者の二三人が、こっそり飲みに出、やがてぞろぞろ。 捨て置けないと重要会議で番屋を作ることにした、人呼んで禁酒番屋。
近藤様、いらっしゃいませ。 思案した、ここで一升飲む。 困ります。 奥まってやるから。 まことによい味だ、もう一升。 夕景まで、身共の小屋に、一升届けてくれ。 その方、智慧者ではないか、金に糸目を付けぬぞ。
旦那様、考えがあります。 菓子屋のナリで、お遣い物のカステラということにして、五合徳利二本入れるのは、どうでしょう。
向う横丁の菓子屋ですが、近藤様のお小屋へ、お遣い物のカステラをお届けに。 一応、取り調べる、役目の手前だ。 これへ出さんか、もそっと前へ。 あの近藤がカステラとは。 お遣い物だそうで。 進物か、通ってよいぞ。 ありがとうございます、どっこいしょ。 ちょっと待て、今、どっこいしょと申したであろう。 ドイツの将校、と申しました。 カステラがそんなに重い訳がない、油断も隙もないな。 控えておれ、何じゃこれ、徳利ではないか。 ドイツで発明された、水カステラでございます。 控えておれ、役目の手前、改める。 ゴク、ゴク、ゴク、フーーッ! 未だ、調べはつかぬぞ、ご同役も行かれよ。 ゴク、ゴク、ゴク、フーーッ! 未だ、調べはつかぬぞ。 この、偽り者奴が! こら! この、偽り者奴が!
旦那様、今度は、一升徳利そのままで、油屋のナリで、油のご注文があったということにしては、どうでしょう。 お願い致します。 いずれへ参る(もう、だいぶ酔っ払っている)。 近藤様のお小屋へ、油のご注文で。 一応、取り調べる、役目の手前だ。 これへ出さんか、何だ、ぬちゃぬちゃしておるな。 油徳利には違いないが、控えておれ。 ご同役、水カステラのようで。 ゴク、ゴク、ゴク、フーーッ! この、偽り者奴が! 棒しばりだッ!
旦那様、今度は私が…、大丈夫、酒を持っていかない。 小便を、小便だと言って持って行くんです。 倫理的にどうだろうか。 お願い致します。 い、ず、れ、へ、ま、い、る(ぐでんぐでんに酔っ払っている)。 向う横丁の小便屋ですが、近藤様のお小屋へ、小便のご注文で。 馬鹿! 小便など注文するものがあるか。 松の肥やしにするというお話で。 門番、湯のみを。 早いな。 一応、取り調べる、役目の手前だ。 たわけ者奴! これへ出せ。 どうぞ、ごゆっくりと。 身共、ご同役、門番(と、湯のみを置く)。 今度は燗酒か、控えておれ。 だいぶ泡立っておるな。 燗の付け過ぎか。 目に来ますな。 ウッ! けしからん、こんなものを。 このーーーッ! 偽り者ですか? このーーッ、正直者奴が!
柳家小はぜの「旅行日記」 ― 2025/11/07 06:59
11月4日は、第689回の落語研究会だった。 柳家小はぜは二ツ目、柳家はん治の弟子、頭はつるつるだ。 陽気がよくなると、旅に出たくなる。 昔の旅は、歩きだからくたびれた。 旅籠(はたご)には、いい所と、そうでない所がある。 やっと着いたよ、もうじきだ。 足に肉刺(まめ)ができた、もうすぐ米が取れるよ。 なんだ、物置小屋か。 文句ばかり言うな、俺は気に入ってて、三度目だよ。 どうして、ここにするんだ……、味わい、風情がない。
お花、表へ行け、誰か来たぞ、下駄を盗まれるといけない。 お客様です。 ようこそ、お出でなさいませ。 二人、やっけいになる。 お二人さんですか、勝手に二階にお上がりになって、好きな部屋へ。 言っとくけど、自分で灯りを点けて下さい、それを頼りに飯を運ぶので。 部屋を見つけた、灯りを点けろ、客間かい、これ。 天井はシミだらけ、壁が落ちて、畳はタタで、ミがない。 文句ばかり、言うな、食い物が旨えんだ。
先一昨年、鶏鍋が軟らかくて旨かった。 あんまり旨いんで、お代わりをして、勘定もタダ同然、翌朝、お土産に鶏の佃煮をくれた。 翌年は、豚鍋が旨かった。 あんまり旨いんで、お代わりをして、勘定もタダ同然、翌朝、お土産に豚の佃煮をくれた。 去年は都合で来れなかったんで、三度目に、お前を連れて来た。 親父さんはいい人で、腹の中に何もない正直者だ。
階段がミシミシ、主が来た。 ようこそ、お出でなさいやした、宿帳を持って来ました。 東京で質のよくない二人組の強盗が出ましたそうで、駐在が張り切って、ここへ来れば「袋の鼠」だが、変名を使うかもと…。 宿帳をお願いします。 顔色が変わらないところをみると、大物で。 俺は三度目、馴染だよ。 はばかりは、外後架で、そばに木の切り株があって、つまずいた。 それをご存知なら、まんざら、強盗ではなさそうで。
先一昨年、鶏鍋が旨いと言った客だよ。 あんれまあ、鶏鍋出したのは、あん時だけ、よくお達者で。 患っていた鶏が、お陀仏になった、キンピラゴボウでも作ろうと思って、お花にゴボウを掘りにやったが、ゴボウは土の中で生きている、命あるものは大切にしたい。 軟らかい鶏で、旨え、旨えと食った。 軟らかいわけだ、長いこと患っていた、よくお達者で。 死骸だったのか。 死骸ではない、ひとりでにおっ死んだんだものだ。
明くる年は、豚鍋が旨かった。 ハッ、あんれまあ、豚鍋出しやした。 因縁はあるものだ、豚鍋出したのは、あん時だけ、よくお達者で。 二年前、豚のコロリ病が流行った時、ウチの豚も義理堅くコロリ病に罹った。 役場が、郡山剛蔵先生(小三治の本名)を寄こして、大きい注射をぶったけれど、豚はぶっ死んだ。 キンピラゴボウでも作ろうと思って、お花にゴボウを掘りにやったが、ゴボウは土の中で生きている、命あるものは大切にしたい。 言いそびれて、心配していたが、大丈夫だ、大きい注射をぶったから、東京に着くまではもつだろう、と。 知らなかった! 強盗でないことがわかったから、晩のおかず、キンピラゴボウでも作ろうかね。
お前、そんな目でみるな。 俺、先に帰るよ、気持悪い、倒れそうだ。 待ってくれよ、こんなところで、お前が具合が悪くなってみろ、お前が鍋になるよ。
与太郎の真打披露、小夏の子が産まれる ― 2025/10/17 07:06
翌年の早春。 松田は、来週から助六を襲名して真打披露する与太郎の準備に余念がない。 八雲の家に来ても、小夏のところに寄らない与太郎に、お腹がこんなに大きくなった、来ないと化けて出ますよ、と。
八雲は、三味線を弾きながら、春の雪だねえ。 うたた寝している小夏に、風邪を引くよ、と横になり、「あくび指南」を話しながら、小夏の頭をなでる。 小夏が子供の頃、助六が「あくび指南」をやると、寝ちまった様子が、オーバーラップする。 八雲は小夏に、与太の準備でくたびれた、と言い、私を殺さないね、と。 小夏は、殺したいけれど、この腹の子にあんたの落語が聞かせられなくなる。 私、怖い、産むのが。 与太が来ても、部屋から出ない、喧嘩をしたのかい。 プロポーズされたけれど、断った。 母さんと同じになるんじゃないかと思って。 何か、言ってよ。 真打披露の初日は、必ず見に来なさいよ。
師匠が与太郎の部屋に来る。 初めて来たけど、懐かしいねえ、こんな部屋で「死神」を習った。 来週は真打披露、今後は稽古はつけない、最後の稽古だ。 一度っきゃ、やらないよ。 「芝浜」を始める。 ちょいと、お前さん起きとくれ……、おっかあ開けてくれ……、夢にしちまったんだよ堪忍しておくれ。 雪の中を、八雲が帰って行き、助六が横を歩いている、あとは助六、あんたの出番だ。
与太郎の助六、真打披露、客席に松田と小夏が来る。 トリの助六、手を挙げて登場。 「芝浜」を始める。 マクラ無し。 馬鹿に素直で、夢にしちまったんだよ堪忍しておくれ……、五十両、夢じゃなかったんかい。 小夏は(腹に手を当て)、父ちゃんの落語が聞こえる、と。 辛え思いをさせたな、俺が悪かった、この通りだ勘弁してくれ……、お久し振りだな……、飲まないのかい、やめておこう、また夢になるといけねえ。 拍手、拍手、拍手! ヤッ日本一! 両親に囲まれた子供の小夏に、父ちゃんと母ちゃんと、どっちが好き? 痛い! 痛い! と、腹を抱える小夏。 お嬢さん! 救急車を! と松田。
病院に、助六が駆けつけ、松田と萬月は、逆子で予定日より早く、危ないかも、と。 八雲は、誰もいない寄席へ行き、ひとり「寿限無」をやっていた。
苦しみいきむ小夏、この子だけは助けて、と。 おぎゃあ、おぎゃあ! 与太郎が駆けつける。 アネさん! 与太! 与太、一緒になろう、私、与太と、この子を助六の孫に育てたい。 合点、承知だ!
名前は信之助、父ちゃんの名前から信の一字をもらいたい。 信ちゃん! よー、信坊! 信坊、父ちゃんだよ。
師匠、アネさんと所帯を持ちたい。 あの子がどうしたって、自由だ。 お前だけは、一人前の弟子にした。 もう一つ、この家にご厄介になって、家族になりたい、みんなで暮らしたい。 助六を名乗ったからって、代りにはなれっこないけれど、でもいつか名前が馴染めば、二人の中の助六をきっと叶えられる。 八雲は、好きにするさ。 松田は泣き、こらえきれずに立つ。
小夏は、少しだけ思い出した、25年前、父と母が死んだ夜のことを。 松田は八雲に、本当のことを伏せておいて、いいんでしょうか。
元やくざの与太郎、組の親分と対決する ― 2025/10/16 07:14
『昭和元禄落語心中』、第8話「誕生」。 週刊誌に書かれた与太郎、それを機にしてか寄席で「錦の袈裟」をやっても、まるで駄目、受けないので裸になって踊り出す始末。 師匠八雲の座敷も減って、謝りに行く。 八雲は、芸人なんて、見られてなんぼだろ、背中を見せろ、と。 筋彫りだけど、見事な鯉金(金太郎が鯉を抱いている)だ、過去と向き合うんだ、過去を抱えて生きろ、それが人間の業というものだ。 与太郎は、稽古がしたい、と駆け出す。
与太郎の「大工調べ」、大受けで、円屋萬月が「大統領!」と声をかける。 与太郎は、腹の底から声を出せって、入門の時に教わった。 萬月は、小夏の腹の子の父親がわかった、と。 小夏が高校生の頃に不良になり、厄介なもめごとに巻き込まれ、八雲が乗り出して収めてもらった、元の与太郎の親分だ。 箱根で二人は会った。
お栄の料亭。 親分の所へ、小夏がお願いがあって、と来る。 そこへ萬月に話を聞いた与太郎が浴衣のまま飛んで来る。 お栄は、今は駄目と止めるが、座敷へ。 挨拶する与太郎に、親分は、会いたかったよ与太ちゃん、何回か落語を聞きに行った、と。 与太郎は、顔も知らない人の代りにお勤めに行って来いと言われた、あの日以来で、刑務所にいる間に親父が死んだ。 アネさん。 俺たちは結婚します、お腹の子のことをはっきりしてもらいたい。 親分は、与太郎をつかまえて、池に放り込む。 小夏は親分に、与太を許して、と。 死にたい、とも。
池から上がってきた与太郎に、親分は、何でも言ってみろ。 与太郎は、落語の啖呵で、アネさんのお腹の子を、後からくれなんて絶対言わないでもらいたい、てのが俺の言い分で、と滔々と述べて、というのが私の言い分でございます。 親分は、落語の啖呵売りかい、惚れ惚れするような、商売道具を出されちゃあな、精進して来たんだなあ、いい噺家になった。
隣の座敷で一部始終を聞いていた八雲は、親分さんにはまた返しきれない恩をかけちまった、と。 その後、親分は八雲に、さすが与太郎、師匠の一番弟子で。 あの馬鹿ですから、でも自分の落語が見えてきたのかもしれません、弟子ってのは、勝手に育つもんで。
小夏は、与太郎に、あの人には、私が無茶なお願いをしただけなんだ、世の中には、口にしないほうがいいことがある。 本当は、怖いわ。 おいらといれば、大丈夫。 あんたといたら、不幸になると思ったんだ、憐れみ、同情は、勘弁して。 アネさんは、俺にとって大事な人だ。 小夏は、申し出を断る。
真打目前の与太郎、小夏の腹の子の父は? ― 2025/10/15 07:07
『昭和元禄落語心中』、第6話「心中」をうっかりして録画していなくて、第7話「昇進」に飛んでしまった。 大事なところが抜けたけれど、いずれ、何とか辻褄が合わせられるのだろうか。 9月1日~3日、テレビドラマ『昭和元禄落語心中』発端、前座になった与太郎は…、前座・菊比古(八雲)と初太郎(助六)の戦中戦後、から話はつながる。
昭和62(1987)年夏、日本の企業が53億円でゴッホの《ひまわり》を落札した。 菊比古の八代目有楽亭八雲、共に歳を取った運転手の松田に、入門10年になった有楽亭与太郎(竜星涼)は、来年真打ほぼ決まりだって、協会会長をやってくれって言われてる、と話す。
与太郎に兄さんと呼ばれる円屋萬月(川久保拓司)は、最近テレビの仕事ばかり、寄席もここ一軒(雨竹ホール)になったけれど、落語は絶対なくならない、真打だってねえ、漫談で受けてて寄席で客を呼べる芸人だ、と与太郎に言う。 真打の話、世話になった人、たった一人にしか言っていないのに、与太郎が頭を刈った床屋の親方にも広まっている。 褒めてくれた円屋萬月と居酒屋でしこたま飲んだ与太郎、酔って裸踊りをした。
八雲の家に電話、松田が出て、今は別にいる小夏(成海璃子)、お嬢さんが何か話がある、とやって来る。 なんだいその頭はと言われた与太郎は、プロポーズかい、と。 小夏は、子供を産む、妊娠三か月、一人で産んで、一人で育てる。 相手は教えない。 子供だけが欲しかった、助六の血を絶やしたくない、一人で育てる。 許しません、戻ってきてください、どういうつもりで、小さい時から育ててきたか、と松田。 八雲は、好きにするさ、松田さん行こう、日が暮れちまうわ、と出かける。
七代目の墓参り。 八雲は、松田さんの剣幕に驚いた、あの跳ねっかえりが、と。 女の人も、男と同じだけ自由になったんですね。 24年になる(昭和38年から)、小夏の双親と同じ年だった。 私たちも、歳を取った。 死んだ者は、歳を取らない。
与太郎は、小夏に、おっさん鬼みたいに厳しい、落語百席、酒も遊びも止められている、と。 小夏は、よくここまで頑張った、元やくざが、はんぱなのが。 落語を何か、やってくれ。 「野ざらし」、浅草弁天山で打ち出す鐘が…、コツがあるサイノサイノサイ…、魚に耳があるか…。 よくなったね。 真打昇進に集中した。 アネさん、俺たち、その子の親になれないか? 惚れた腫れたじゃなかった、子供が欲しかっただけ。
与太郎は、師匠に助六の名を継ぎたいと言う。 好きにしな、名前より芸だよ。 手前の全てで落語と向き合うんだよ。
お栄が、与太ちゃん、起きなよ。 あんた、ひょっとして、プロポーズした? お栄さん。 ごめんね、真打の件、床屋から広まっちゃったようで。 ところで、小夏はどう、会ってんだろ。 師匠のところで会った。 相手は誰なんだい。 知らないよ。 かもしれないと思うことだけ、かなり年上、けっこう身近にいる、まさかと思うだろ。 もうよしな、あんただけは知らないほうがいい。
与太郎は、師匠の家で、松田さんなんでしょ、アネさんのお腹の子の父親? 大丈夫ですか、頭。 違うよ、馬鹿野郎、とんだ与太郎さんだよ。
アネさん、おいら、こないだ言ったこと、本気だから、考えといて下さい。 今は言わないで、そんなことより、今は稽古だろ。
二階に与太郎の住む駄菓子屋へ電話。 週刊誌に、酔っ払って裸で踊っている、背中に彫り物のある元やくざという写真を出す、と。 師匠の八雲まで、仕事がキャンセルになる。 記者のアマケンは、有名税だ、八つ当たりはやめ給え、と。 実は、落語でも行き詰っている、自分の落語がない。 名人の弟子の、永遠の宿命だ。 八雲の名前に泥を塗るな。 しかし、師匠の八雲は、好きなように書いてくださって結構、昔から知っている。
八雲は、与太郎が昔いた組の組長(中原丈雄)と会う。 小夏が妊娠しているんですよ、と言う。

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