「エンジョイ・ベースボール」「ワン・チーム」のWBC2023/03/25 07:13

 第5回WBCワールド・ベースボール・クラシック、日本代表「侍ジャパン」は21日(日本時間22日)の米マイアミのローンデポ・パークでの決勝で、前回優勝のアメリカを3-2で破り、14年ぶりに世界一を奪還した。 東京ドームでの1次リーグ、9日中国を8-1、10日韓国を13-4、11日チェコを10-2、12日オーストラリアを7-1と破り、16日の準々決勝はイタリアを9-3、アメリカに渡って20日(日本時間21日)の準決勝メキシコを6-5と、一度も負けなかった。 この大会をずっと見ていて、堪能したのはもちろんだが、この結果を見て、これは慶應義塾野球部の「エンジョイ・ベースボール」、2019年ラグビーワールドカップ日本代表のスローガン「ワン・チーム」ではないか、と感じたのだった。 みんな楽しそうにやっていたし、チームとしてまとまっていた。

 投打二刀流の大谷翔平(エンゼルス)は試合終盤、ベンチと外野のブルペンを往復して、登板に備えた。 8回ダルビッシュ(パドレス)がシュワバー(フィリーズ)にホームランを打たれ、3-2と一点差に迫られた。 9回、マウンドに上がった大谷、四球を許したがダブルプレーで2アウト、エンゼルスの同僚で、大リーグで歴代10指に入るとも言われる強打者で主将のマイク・トラウトを打席に迎える、漫画か映画のような展開になった。 フルカウントから、鋭く曲がるスライダーで空振りの三振、大谷は帽子もグラブも投げ捨てて、駆け寄る仲間たちと優勝の歓喜に雄たけびを挙げたのだった。

 決勝でアメリカに勝つのは初めて、MVPにも選ばれた大谷翔平は、「日本の野球が世界に勝てるんだという。みんなが一つになって、本当に楽しい時間でした。」「野球を楽しんでいる次の世代の子たちが、僕らも頑張りたいと思ってくれたら幸せです。」 つぎの2026年大会にも、出たいか聞かれ、「出たいですね。そうなるよう最善の努力を毎年したい。」と話した。

 帰国直後、テレビ朝日「報道ステーション」での栗山英樹監督の話がすばらしかった。 ダルビッシュにも、翔平にも、決勝戦で投げてくれとは、言わなかった。 翔平には、アマノジャクなところがある。 本人たちが投げると言ってきた。 「やってくれると信じている。」 「僕はそんなに能力がある人間ではない。ただ唯一できるのは、誰よりも情熱を持ってやること。できることはそれしかない。」

チャンピオンのTシャツを着た栗山監督と、牧原大成(ソフトバンク)が、二人で話している映像が流れた。 牧原がお辞儀をし、栗山監督は牧原の目を見ながら、何か話していた。 牧原は、激闘の準決勝のメキシコ戦で、野手全員が試合に出たのに一人だけベンチにいた。 決勝戦では試合終盤、吉田正尚(レッドソックス)に代わってセンターに入り、ラーズ・タツジ・ヌートバー(カージナルス)がレフトに回った。 栗山監督はその映像を見て、相手の目を見ながらのコミュニケーションが大切だと語っていた。

福澤克雄さんの、福澤「心訓」発言に驚く2023/01/17 07:07

 髙橋裕子津田塾大学学長の記念講演「福澤諭吉と津田梅子」を書く前に、福澤克雄さんの福沢家代表挨拶に触れたい。 ご存知、TBSのテレビドラマ『半沢直樹』のディレクター、学生時代は巨漢のラグビー選手(旧姓山越)で1986(昭和61)年1月15日上田昭夫監督の下、トヨタを破り日本一になった。 1964(昭和39)年生れの59歳、私が卒業した年だから、私はまもなく卒業60年になるわけだ。 経済学は進歩して、世界の人々の幸福に貢献したのだろうか。 福澤克雄さん、福澤先生の「孫の孫」、次男捨次郎さんの子、時次郎さんの娘和子さんの子、ご両親の離婚で福澤姓に戻ったそうだ。

 福澤克雄さん、「バカチンだった、ひどい幼稚舎生、太っていて、漢字も駄目」と始めた。 中川眞弥先生が、犯人は無職だろう、生きていくために仕事が大事、好きな仕事を見つけろ、そのために勉強するのだ、と教えた。 桑原三郎(?)先生は、ラグビーをやれ、普通部では二軍で成績も悪かったが、落第しても二、三代に渡って友達ができる、と。 ラグビー部は殴る蹴るはないけれど、それ以上に厳しく悲惨だったが、それでその後何にでも耐えられた。 映画監督になりたいと思っていて、富士フイルムという立派な会社に入ったが、TBSに入って現在に至っている。 中川先生が、福澤「心訓」をかみ砕いて教えてくれたからだ。

 2013年9月20日の慶應塾生新聞500号プロジェクトで、福澤克雄さんは学生に向け、こう語っていた。 「これだと思った、それも一生続けられる仕事を見つけてほしい。その仕事にプライドを持って、堂々と生きてほしい。」

 福澤克雄さんは、あの体型で平気で生きて来られたのは、福澤「心訓」の「人とは」「仕事とは」「心とは」をかみ砕いて教えてもらったことが、大きかった。 ぜひ塾の一貫教育で、「心訓」をかみ砕いて教えてほしい、と述べたのだった。 慶應経済学部卒剣道部の半沢直樹にも、一生を貫く仕事というセリフを言わせた。 堺雅人は早稲田だが、息子を幼稚舎に入れた、とも。

 私はびっくりした。 世に広く行なわれている「一、世の中で一番楽しく立派な事は一生涯を貫く仕事をもつ事です。」以下七条の「福澤諭吉心訓」は偽作である。 福沢の書いたものではない。 中川眞弥先生には、私も福澤諭吉協会で可愛がって頂き、いろいろ教えてもらった、それをご存知でないはずはない。

 私は、すぐにTwitterに、福澤克雄さんの名を出さずに、こう発信した。 「残念ながら「一、世の中で一番楽しく立派な事は」以下七条の「福沢諭吉心訓」は偽作である。福沢研究の第一人者、富田正文氏は『福澤諭吉全集』第二十巻附録で、「惜しいことにその作者は自分の名の代りに福沢諭吉の名を借りて来たばかりに自分の創作した訓えの一つにそむく結果となってしまった。その訓えとは『一、世の中で一番悲しい事はうそをつくことである』」」

ランディ・バースの野球殿堂入り2023/01/15 07:24

 1985(昭和60)年10月21日付、江國滋さんから頂いた自筆絵葉書である。 お宝として、ずっと額に入れて飾ってあったので、経緯をすっかり忘れていた。 この年、阪神タイガースは21年ぶりのリーグ優勝を果たした。 ランディ・バースは、その立役者で、3番を打ち、4番掛布雅之、5番岡田彰布の三者連続ホームランが印象深い。 日本シリーズでは、三試合連続ホームランでMVPになった。 監督だった吉田義男さんは、「ランディがいなければ日本一はありえなかった」とたたえていたそうだ。 自筆絵葉書は、その時、阪神ファンの江國さんに、私がお祝いに何か送った、その礼状である。 文面を見て、驚いた。 こうなっていたからだ。

 「なんという心やさしきメッセージ、なんという心ききたる贈物でありましょう。来年は最終戦で巨人と優勝を爭いたいですね。(父虎)  小さなバースをどうもありがとうございました。来年の優勝が決まるまで、一年間大切に愛用いたします。(姉虎)  大変すてきな物をありがとうございました。巨人ファンの方からの贈り物なんて最高にうれしかったです。(妹虎)」 

 差出人は、江國滋さんの四角の判の隣に、香織、晴子、とあった。 お嬢さん達も阪神ファンだったのだ。 のちに作家になる香織さんのハガキを頂いていたことなど、私はすっかり忘れていた。

巨人のクライマックスシリーズ進出可能性2022/09/26 07:12

 プロ野球のシーズンもいよいよ押し詰まって来て、俳句でいう「数え日」となった。 セ・リーグはヤクルトが昨日優勝、DeNAのクライマックスシリーズ進出が決まっている。 巨人は、クライマックスシリーズに進出できるのだろうか。

巨人は、25日の中日戦に破れた結果、67勝71敗、勝率.486となった。 連敗は、たいへん痛かった。
阪神と広島は現在、66勝71敗、勝率0.482で並んでいる。

この後、巨人は10月1日、2日とDeNA戦2試合を残している。
阪神は、9月27日と28日、10月2日にヤクルト戦がある。
広島は、9月29日と30日にヤクルト戦、10月2日に中日戦を残している。

巨人は、2勝0敗で勝率0.493、1勝1敗で勝率0.486、0勝2敗で勝率0.479となる。
阪神と広島ともに、3勝0敗で勝率0.493、2勝1敗で勝率0.486、1勝2敗で勝率0.479、0勝3敗で勝率0.471となる。
3チームが同率になる可能性がかなりあり、同率だとセ・リーグは(1)勝ち数が多いほう、(2)対戦勝率、(3)前年度順位上位の順に、クライマックスシリーズに進出が決まるのだそうだ。
なお、巨人に連勝した中日も、DeNA戦4試合、広島戦1試合を残し、全勝すれば勝率.482となり、ほんのかすかな望みがある。

巨人はDeNA戦の連勝がぜひとも必要で、ヤクルトにがんばってもらうことを期待しなければならないことになった。

小泉信三さんの「スポーツが与える三つの宝」2022/09/08 07:14

 某大先輩から、電話で質問があった。 どこかで話をすることがあって、小泉信三さんの「スポーツが与える「三つの宝」」を確認したいというのだった。 一応、手元の本などを探して、答える。

1.  練習は不可能を可能にする。

2.  フェアプレーの精神。

3.  よき友。

   今村武雄さんの『小泉信三伝』(昭和58(1983)年・小泉信三先生伝記編纂会)に、「スポーツの三つの宝」があった。 昭和37年(10月28日)、日本体育協会主催のオリンピックデー大会で「スポーツが与える三つの宝」と題して講演した。 その要旨を、後に『産経新聞』のコラムに書いた。

 三つの宝の第一は、小泉の持論「練習は不可能を可能にする」である。 「人類の歴史は見ようによっては、不可能を可能にする過程の連続である。それは、一つは発明によって、一つは練習によって行われる。(中略)……吾々人類は、無数の不可能を練習によって可能にしつつある。早い話が水泳である。水泳を知らないものは、水に落ちれば溺れて死ぬ。水泳を知るものは、容易(たやす)く浮かぶ。」

 第二の宝は、フェアプレーの精神。  「フェアプレーとは何か。それは正しく、いさぎよく、礼節をもって勝負を争うことである。反面からいえば、不正をにくみ、卑怯をにくみ、無礼をにくむ精神である。この精神は、無論誰もが抱くものであるが、勝敗を争う競技の間に最も痛切に体験され、養われる。Be a hard fighter and good loser.(果敢な闘士で、そしていさぎよき敗者であれ)、果敢な闘士であればあるほど、そのいさぎよき敗者であることの意味は深い。フェアプレーという言葉は英語であるが、その精神は、直ちに日本人の心に訴える。『尋常の勝負』といい、『負けっぷり』が好いとか悪いとかいう言葉を持つ日本人は、本来フェアプレーということを最も尚(たっと)ぶ国民ではないのか。」

 第三の宝は、友だといいたい。 「友は人生の宝である。わが信ずる友、吾を信じてくれる友、何でも語ることのできる友、何をいっても誤解しない友、これを持ち得たものは、人生の最も大きい幸福を得たものというべきである。(中略)スポーツによって得た友が、利害の打算を全くはなれた、一種特別のものであるということは、体験あるもののひとしく認めるところであろうと思う。同じチームで練習の労苦をともにした友、共に試合に出場した、いわば戦友というべき友、更に敵味方となって勝負を争った、その相手、この人々との交りはこれは格別のものである。」

 小泉は友を日光に喩えて言う。 「友は日の光りと同じく、われわれの心をあたため、われわれの心に或るよきものを育てる。すべての花、すべての葉が日の光りを得て咲いたり茂ったりするように、われわれの心は友を得て咲いたり茂ったりする。」