50年前、高校卒業南紀の旅・前半2010/05/26 06:52

 湊邦彦君を含む5人の仲間で、南紀を旅行した。 ちょうど50年前、1960 (昭和35)年3月24日から4月2日まで、高校を卒業して大学に進む春休み のことだった。 一冊のアルバムが残っていた。 文字通りの若書きで、こう 始まる。  「高校時代のエンドマークは、5人の仲間で、まさに歩いた、この、紀の旅 であったと思う。/多摩川の予備キャンプや、アメ横での買い物、交通公社通 い、もう、ぼくらの胸の中には、紀の国が住んでいた。/そして、ぼくらは動 き出した。シュラフや鍋や4貫目のザックを背負って、紀州路へ向って」

 〔一日目〕3月24日 強風・晴 夜、新宿のA君宅に集合、東京駅(と、思 う)23時35分発の夜行で名古屋へ。 一日一首というインチキ短歌を書いて いる。 <旅立ちのはやる心を抑えつつ母のつくりし寿司をほおばる>

 〔二日目〕3月25日 小雨 伊勢神宮→二見浦→賢島(雨中のキャンプ)  <伊勢宮に荘厳な森今はなく嵐の跡をかなしくとどむ> 伊勢湾台風の半年 後のことだった。 子供の頃、伊勢神宮で、その杜に感動した経験があった。

 〔三日目〕3月26日 雨のち晴 賢島→真珠島→(晴)→南紀・熊野市 熊 野市・獅子岩、紀勢線の真上、第二稲荷山でキャンプ。 湊邦彦君が餅を焼い ている写真がある。 <灘向きてそびえる獅子のほえ声をかき消す熊野の波夜 に白し>

   〔四日目〕3月27日 晴 鬼ヶ城入口→プロペラ船→瀞八丁→湯の峯温泉  新宮では予約していたプロペラ船が出払っていて、しぶしぶ宮井までバスで行 き、プロペラ船に乗っている。 「素朴な樹木が美しい、ただプロペラ船がバ タバタいうのはいやだ」と書き、三重県・和歌山県・奈良県「三県分立」とい う写真がある。 井上靖の「プロペラ船はエンジンをとめ、いかにも一休みと いった恰好で蒼く澄んだ深い淵に浮かんだ。このような川岸に、しかも山と山 との間に挟まれた空地に、人々は毎日のように同じ川の流れを見て生きている のだ。」という文章を引用している。 <菜をゆでる静かで熱き山の湯に野営の 疲れ一夜で飛ばす>