テレビドラマ『運命の人』2012/04/14 03:37

 子供の頃から、新聞が好きだった。 中学と高校では、学校新聞をつくった。  テレビ初期のNHKのドラマ「事件記者」などは、よく見ていた。 最近のテ レビドラマは、大河ドラマ以外、あまり見ないのだが、3月18日が最終回だっ たTBSの『運命の人』(山崎豊子原作)を見たのは、一つには新聞を扱っていた からだ。 もう一つは、松たか子が出ていたから。 ドラマではあるけれど、 1971年の沖縄返還交渉にからんで、密約を交わした疑惑のある外務省の機密文 書が漏洩した、毎日新聞の西山太吉記者の事件に材を得ている。

 毎朝新聞の弓成亮太(本木雅弘)が、アメリカとの沖縄返還交渉を巡る政府 の疑惑を追及していて、情報を得ようと外務省事務官の三木昭子(真木よう子) に近づく。 弓成のとてもよく出来た妻由里子の松たか子がいいのはもちろん だが、昭子の外務省を病気で退職した夫をやった原田泰造が意外の好演だった。  『龍馬伝』では原田泰造は近藤勇、真木よう子はお龍をやった。 真木よう子 の鋭い目力が、印象的。 弓成のライバル記者で親友、読売のナベツネさんに 当る役を大森南朋、佐橋首相を北大路欣也。 当初は他紙も、政府の言論弾圧 として非難したが、東京地検特捜部の検事(のちに議員になって国会で独特の 面白い質問をしていた佐藤道夫)が書いた「ひそかに情を通じ、これを利用し て」という起訴状が流れを変え、週刊誌の報道もあって世論は一転、記者と女 性事務官を非難することになる。

 有罪判決が確定し、父の死で継いだ故郷の青果会社も経営破綻した弓成は、 沖縄へ行く。 死のうと海へ飛び込んだところを救った謝花ミチ(美波)は、 琉球ガラスの工房で働いているが、暗い過去を持つ。 弓成と同じように…。  琉球ガラスの工芸品は、コカ・コーラなどアメリカ軍関係者の廃瓶を原料にし ている。 ミチの仲間の職人は、それを「闇を光に変える力」と言う。 沖縄 で暮すうちに、弓成は沖縄の闇に埋もれた歴史、沖縄の痛みを、深く知るよう になる。 沖縄の人々は、暗い過去の歴史に抗うように、明るく強く生きてい る。 弓成も、自分の過去にもう一度向き合おう、自分の運命を引き受け、生 き恥をさらしても、沖縄の歴史や痛みを、本土の人たちに伝えたいと考える。  この国の未来を変えたい、せめてその火種になりたい、と思うのだ。 暗いや りきれない話が、明るい希望を感じさせる結末になっていた。

 『運命の人』の背景には、政府対新聞、知る権利や情報の開示、現在も未解 決の沖縄の基地の問題など、大きなテーマがある。

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