志ん輔の「猫の忠信」後半2013/12/09 06:34

狐狸妖怪にちがいない。 コーリヨウカンか。 あいつの耳を引っ張って「ピ クピクだぁー」と言え、俺が飛び込んでひっぱたく。 押えんのは、誰? お 前だよ。 えー、ごめんなさいよ。 六さんと、次郎さんじゃないの。 中の 常さんが(こもった声で)「よく来たな」。 どーも、こんちは。 奥へ来て、 飲めよ。 わっちたちは、この辺がいい、壁がいい、ヤモリ年なんで。 次郎 さん、酒好きだろ。 馬の小便かもしれないよ。 これ、酒だよね。 本物の、 旨え酒だ。

兄ィ、ご返杯、と言って、手をつかんで、耳を引っ張って「ピクピクだぁー」。  飛び込んだ本物、俺は吉野屋の常吉、ヨシツネだ、お前は何者だ、言わねえか。   (笛 藤舎推峰、打方 望月太津之の鳴り物入り、芝居がかりで)「申します、申 します、頃は村上天皇の御代、ピーーッ、山城、大和の二国に田畑を荒らす大 鼠が出た。 易を立てると、「雌猫の生き皮で製したる三味線、初音の三味線を 弾けば、大鼠は退散する」と出た。 その雌猫はわたくしの母親、お国の為と は言え、子猫の私は泣いて暮らしておりました。 ピーーッ、母恋しさに尋ね 歩き、たもたもたも、探しあてたるわたくしの母親が、あれあれあれ、あれに 掛かりしあの三味線、わたくしはあの三味線の子でございます。」

大きな猫だよ。 兄ィ、今度のおさらいは大当たりだね。 『千本桜』の掛 け合いだろう。 これで全て役者が揃った。 兄ィが弁慶橋の吉野屋の常さん で、義経。 猫がただ酒を飲んだから、猫のただのむ(忠信)。 あっしが駿河 屋次郎吉で、駿河の次郎。 こいつは亀屋六兵衛で亀井の六郎。 肝心の静御 前がいねえじゃないか。 ちょうど師匠が文字静だから静御前。 あたしみた いなお多福に、静が似合うものかね。 すると、猫が「ニャアウ」。