財政再建はとても厳しい2013/12/19 06:26

 武田晴人東大教授は、財政再建を考える。 平成に入ってからのバブル崩壊 による税収減と、景気後退への対策としての財政出動(特例公債発行)の繰り 返しによって、政府債務を累積してしまった(もろもろ含めれば1000兆円)。  だがギリシャのようなことが起こりにくいのは、日本国債を海外が持っていな いから。 部門別の資金過不足の推移をみると、民間企業部門、家計、政府の 3つの経済領域のなかで、(一貫した)家計の貯蓄と、1997年以降の民間非金 融法人の貯蓄で、政府の借金を支えている。 バブル崩壊後、政府債務は累増 しているのに、金利の低下(1990年の6%から1%へ)によって、国債の利払 い費は40兆円ぐらいで推移していて、累増していない。 国内における家計 貯蓄が、政府債務を支えていることの意味は、国債の金利の低下が預貯金金利 の低下に連動していることにある。 つまり民間金融機関が2013年に保有す る国債約600兆円に付さるべき預貯金金利が、政府部門の債務の増加を抑制す るために使われているのと、同じことになる。 仮に預貯金金利が3%程度だ と仮定すると、預貯金者は合計18兆円を負担している勘定になる。 これは 預貯金金利への課税と同じ効果があり、(将来世代に付けを回していると云われ る)現在世代が全く負担を逃れているわけではない。 ただし、これでは債務 は減らない。

 OECD諸国の財政規模と公務員数規模をみてみると、日本は財政規模の割に 公務員の少ない小さな政府である。 小さな政府なのに、収支が合わないのは、 税収不足。 増税の方法は家計と法人企業の税負担。 収支の構造からみて、 規制の緩和や公務員の削減では到底必要な償還資金は出ず、サービスの低下に なるだけだ。 法人企業のうち利益を計上しているのは約3割で、7割は欠損 企業として納税の義務を負っていない。 法人企業の経常利益は増加している のに法人税額は増えておらず、比率は半分位落ちている。 その分は株主配当 と内部留保に回り、借金を返して、企業は貯蓄主体に変ってしまった。 企業 は、「良き企業市民」として応分の負担をしているのか、という視点から考えて みる必要がある。

 成長は財政再建の特効薬となるのか。 経費の増加を一切行わないとして、 (1)税収の伸びが5%になった場合でも、5年後の債務残高は減らない。 (2) 景気回復に伴って長期金利が上昇し、国債金利が1%あがるとすると、政府債 務が増加してしまう。 (3)消費税を10%にすると、10兆円の増税となるの で、少し減る方向に向く。 (4)累積した債務を塩漬け(政府機関が持つ国 債に対して、超長期(百年棚上げ等)・低金利の「交付公債」を発行して置き換 え、償還費・利払い費を市場流通分だけとする)にするなど、かなり大胆な改 革をやらない限り、財政再建できそうにない。