志ん吉の「締め込み」 ― 2015/10/31 06:34
というわけで、28日が第五次「落語研究会」の第568回だった。 演目と演 者は、以下の通り。
「締め込み」 古今亭 志ん吉
「ふだんの袴」 春風亭 一之輔
「文違い」 五街道 雲助
仲入
「猫の皿」 立川 生志
「大工調べ」 春風亭 一朝
志ん吉、2010年10月に「たらちね」を聴いて、「上の上、有望だ」と書い ていた。 早稲田大学文学部卒、社会人を経て、スキンヘッド志ん橋の弟子。 落語研究会の高座、国立小劇場だけに、全体が舞台よりセリ上がっている、と いう。 いろいろな場所で演るが、高座は、ビールケースなど積み上げ、それ ぞれ工夫してつくってある。 先日は料亭で20人から30人の会、ビールケ ースを積み、その上に、どういうわけかそれより大きすぎるベニヤ板が載せて あった。 最初の一歩が難しい、乗ると、どうしても曲がる。 前の人が、押 さえてくれた。 実はその会合、一級建築士の集まりだった。 誰がこの高座 にゴー・サインを出したのか、旭化成とかはいないのか。 それに比べ、落語 研究会の高座は盤石の態勢で、自分のウチより広い。
ある泥棒、空き巣に入り、火鉢の鉄瓶が沸いているので、手早く風呂敷包み をつくると、雪駄の後足を引きずる音がチャッチャッチャとして、亭主が帰っ て来た。 慌てて、台所のあげ板の下、醤油樽と糠味噌の間に潜り込む。 お 福、いま帰ったぞ。 何だ、鉄瓶を火鉢にかけたまま、またどっかでペチャク チャしゃべっているのか。 (火鉢の火に、灰を寄せて)何だ、この風呂敷包 みは? 古着屋が来たのか。 ぐちゃぐちゃに入っている、ちゃんと畳むがい いじゃないか。 羽織だ、ウチの紋と同じだ。 (着てみて)ユキがピタッと きたぜ、珍しいな、紐、見たような紐だな、何だ俺の羽織じゃないか。 おっ かあの着物、帯だ。 おっかあがこしらえたんだ。 質屋にでも行こうっての か、それにしては多いな。 荷物をまとめて随徳寺か。 さては男が出来やが ったな。 俺ってものがありながら…。 長屋の連中の様子がおかしいと思っ た、知らないのは俺ばかりか。
あら、お前さん、帰ってたのかい。 早いんだね、今日は。 お湯に行って、 お光ッちゃんにつかまってね。 いいお湯だったよ、お湯に行ってお出でよ。 何よ、喧嘩でもしたね。 魚金に白身のいいのがあったんで、もらってくるか ら、先にお湯へ行ってきたら。 そんなに湯に行ってもらいたいか。 どこへ ずらかるんだか、ネタは上がっているんだ。 出てけ、出てけ、出てけ、出て け! 寄席の追い出し太鼓みたいだね、ワケをきかして頂戴、ワケがわかれば 出ていくよ。 何でえ、この風呂敷包みは? 男、こさえたんだろ。 お前、 間男してるな。 お前の着ているものは、みんな俺が買ったものだ、身一つに なって出てけ、このお多福。 私の相手ってのは、どこの誰? うるせえな。
お前さん、私と一緒になる時、土下座して頼んだんじゃないか。 お福さん、 ウンと言ってくれ、ウンと言わなければこの出刃で刺す、ウンか出刃か、と言 ったんじゃないか。 弁天様です、と言ったのは誰だい。 弁天様が二年経っ たら、お多福ですか。 ひっぱたくぞ。 ひっぱたいてみろ。 (二発、ひっ ぱたかれて)この暴力野郎。
様子がおかしいと思ったら、女が出来たね。 くやしいよ。 鉄瓶を、亭主 めがけて投げつける。 ゴロン、ゴロン、ゴロンと、台所へ転がって、煮えた ぎっているやつが、隠れている泥棒の上で、ジャーーッとこぼれた。 アッチ ッチと、飛び出した泥棒が、夫婦喧嘩を止めに入る。
止めないでくれ、源さん、止めちゃあいけない喧嘩がある。 なんだ、源さ んじゃないな、誰? どうでも、よろしいじゃありませんか。 仲裁は時の氏 神と申します。 止めちゃあならないワケがある。 ワケを知っているから、 お止めしている。 何で知っているんだ? そこです、ワケは、どうでもいい。 他人の家に上がり込んで、お前は誰なんだ。 風呂敷包みは、旦那がつくった んでも、おかみさんがつくったんでもない。 ひとりでに風呂敷包みができる のか。 まあまあ、できるんです、そこです。 来たんですよ、泥棒が…。 風 呂敷包みをつくって、床下に隠れた。 お前さん、やけにくわしいんだね。 お 前さん、どこから来た。 そこです。 そこ……、お前が泥棒か。 へえ。
何か盗って、ずらかれば泥棒。 私は何も盗っていない、喧嘩を仲裁して、 時の氏神。 そう、泥棒さんが来てくれなければ、夫婦別れするところだった。 お前も、泥棒さんにお礼を言いな。 泥棒さん、よく来てくれました。
私は、これでおいとまします。 お前さんのおかげだ、一杯付き合ってくれ。 私はまだ、仕事をしなきゃあならない、親方がうるさい。 焦って稼ぐと、し くじるぜ。 一杯やる時は、落ち着け。 騒ぎのあとで、早く酔いが回る。 も う一本つけなよ、お福。
いい女ですね、おかみさんは…、あなたそんな顔でよく一緒になれたね。 ウ ンか出刃か、と言われたんで、承知したんですね。 糠味噌桶は、まめにかき 回して下さい。 俺も身を固めたいね、お前さん、一本つけるかい、なんて言 われてみたい………ズ・ズ・ズ・ズ。 寝ちまったよ、風邪引くから、薄い物 でもかけてやってやれ。 物騒だから、しっかり戸締りをして。 あら泥棒は ウチにいるよ。 表っから心張棒かって、泥棒を中に締め込んじまいな。
志ん吉の「締め込み」、長々と書いたのは、上々の高座だったからだ。
小人閑居日記 2015年10月 INDEX ― 2015/10/31 09:56
6781 柳家小傳次の「粗忽の使者」<小人閑居日記 2015.10.2.>
6782 権太楼「猫の災難」のマクラ「出囃子」<小人閑居日記 2015.10.3.>
6783 権太楼「猫の災難」の本篇<小人閑居日記 2015.10.4.>
6784 花緑の「二階ぞめき」<小人閑居日記 2015.10.5.>
6785 市馬の「お神酒徳利」前半<小人閑居日記 2015.10.6.>
6786 市馬の「お神酒徳利」後半<小人閑居日記 2015.10.7.>
6787 清水卓司さん撮影『おとなの浅草案内』<小人閑居日記 2015.10.8.>
6788 「サワコの朝」放送200回<小人閑居日記 2015.10.9.>
6789 「サワコの朝」傑作選<小人閑居日記 2015.10.10.>
6790 まだまだ、「サワコの朝」傑作選<小人閑居日記 2015.10.11.>
6791 「秋の山」と「稲」の句会<小人閑居日記 2015.10.12.>
6792 「エルニーニョ」は男の子、幼な子イエス<小人閑居日記 2015.10.13.>
6793 「今尾藩」と青松葉事件<小人閑居日記 2015.10.14.>
6794 鬼のおかげ、「松永安左エ門」<小人閑居日記 2015.10.15.>
6795 大実業家にして大茶人<小人閑居日記 2015.10.16.>
6796 八十青年欧米視察と日本経済再建<小人閑居日記 2015.10.17.>
6797 訂正、土橋俊一先生のご指摘で<小人閑居日記 2015.10.18.>
6798 『福澤諭吉全集』完成記念会<小人閑居日記 2015.10.19.>
6799 福沢の散歩のお供をして<小人閑居日記 2015.10.20.>
6800 松永安左エ門と福沢桃介・美術品・慶應志木高<小人閑居日記 2015.10.21.>
6801 沢木耕太郎『春に散る』の今まで(1)<小人閑居日記 2015.10.22.>
6802 沢木耕太郎『春に散る』の今まで(2)<小人閑居日記 2015.10.23.>
6803 慶應「落楽名人会」昼の部、仲入まで<小人閑居日記 2015.10.24.>
6804 二代目雷門牛六(もーろく)の「寄合酒」<小人閑居日記 2015.10.25.>
短信 6805 慶應志木会・歩こう会<等々力短信 第1076号 2015.10.25.>
6806 七代目桂道楽の「厠高尾(かわやたかお)」<小人閑居日記 2015.10.26.>
6807 伝馬町牢屋敷のこと<小人閑居日記 2015.10.27.>
6808 「時の鐘」と於竹大日如来井戸跡<小人閑居日記 2015.10.28.>
6809 日本橋で始まった「落語研究会」(第一次)<小人閑居日記 2015.10.29.>
6810 「落語研究会」の権威と伝統<小人閑居日記 2015.10.30.>
6811 志ん吉の「締め込み」<小人閑居日記 2015.10.31.>
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