春風亭柳橋の「干物箱」前半2024/04/07 06:55

 柳橋はにこやかに出て、コロナ禍から通常の営業になったけれど、元来寄席は感染力がない、われわれもお客様が大きな声で笑わないような落語をやった。 40年前も客が少なかった、3~4人、昇太師匠と同期なんだが、客が誰もいないんで、二人で呼び込みをやる。 客が来ると、どちらかが高座へ。 呼び込みしてたのが出て来たんで、客が驚く。 空いているのには、慣れている。 師匠に言うと、だから、食えないよ、ヨセって言ったろ、それでも弟子入りしたんだろって。 師匠は、すごい。 最終的には、好きでないと続かない、道楽のようなもの。 道楽って、言葉を使わなくなった。 ドラ息子、サンドラ煩悩、飲む打つ買う。 飲む……、牛乳ではない、酒、何かにつけて飲む。 打つは、博打、ギャンブル、海外では6億7億かけるらしい。 買う、今は法律で買えなくなっちゃった、ご婦人相手の遊び。 殿方は、この内、一つぐらいは、凝る。

 大家の若旦那、吉原通いで、店の金庫に手をつける。 バカヤロウ!<大声で叱るは真の親子なり><意見聞く倅の胸に女あり><親孝行したくないのに親がいる>。 親父は、叱言の国から叱言を広めに来たんだろう、花魁の笑顔がいい、えくぼが出て、親父は笑うとシワが出る。

 分身が欲しいな、分身の高島田。 いたよ、本屋の善公。 善さん、いるかい! 借金取りは、しつこいね。 留守です。 私だよ。 ヨッ、若旦那、遠慮なく開けて。 戸の左の上を押して、右下を引き、ちょいと持ち上げるようにして、下を蹴っ飛ばす、一人分だけしか開かない。 横になって、入って、足元に落とし穴がある。 開いた。 若旦那、向うへ行って、ワッと騒ぎましょう。 親父がうるさくて行けない。 昔から、親かましい、という。

 善さん、声色が上手いんだってね。 当人が知らないのか、先だっての寄合で、若旦那の声色をやったら、隣の部屋に大旦那がいて、善さんは器用だ、倅そっくりって言った。 本物です、家来が心得ている、私が若旦那のコート、帽子で、眼鏡をかけて。 花魁は、泳ぐように出て来る。 コート、帽子、眼鏡を取ると、冬瓜頭のこの私なので、花魁が怒る。 「善さんじゃないの、洒落がきつすぎるよ」って、いうところに、あなたが出る。 それで、ご祝儀を下さるんでしょ、行きましょ、行きましょ!

 そうじゃなくて、ウチの二階で、つないで欲しい。 留守番ですか、身代わりの。 くだらない、よしましょ、よしましょ。 おたくのお父っつあんは、柔術を心得ている、ヤです。 何だい、わかりました、ご祝儀に羽織の一枚もつければ、やってくれる者は他にいる。 ハナにそれを言って下さい。 嫌だァーーけれども、二階に上がりましょう。 よろしく頼むよ。 向うで、私のレコにも、よろしく。 色白で、ぽっちゃりした橘です。 角(かど)に橘惚れる様子を菊の花、馬鹿な惚れようで。

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