山下聖秀君の論文を読んで ― 2007/01/20 08:01
山下聖秀君の論文を読んで、まず思うことは、すごい高校3年生がいるもの だ、ということである。 日本社会の現状を総体的につかまえ、その解決策を 自分の頭で考えて、自分の言葉で提示している。 「一身独立して一国独立」、 福沢の説いた「個人」の確立と、今日の社会で「孤独でいられる能力」、「個」 と「孤」とを結びつけたところが、すごい。 そういえば福沢は、文明の精神 は人民独立の気力にあり、と言った。 社会学者ゲオルグ・ジンメルなんて、 恥ずかしながら聞いたこともないような人を引用している。 『学問のすゝめ』 だって、読んでいる。 本を書くような同期の友人が、読みづらいので現代語 訳が見たいといった『学問のすゝめ』を、である。
審査員の一人、小林陽太郎さんが指摘している、断定調で、やや事大的なと ころがあるという点は、私も感じた。 社会の現状分析には、裏づけになるデ ータが必要だろうと思った。
福沢の説いた民主主義は実現しなかった、その失望感から、福沢の晩年はけ して明るいものでなかったというのが、近年の福沢研究を聞きかじっての感想 である。 12月にもイギリス流議院内閣制の「交詢社私擬憲法」は、慶應(福 沢研究)でこそ大きく扱われるが、孤立していた(つまり敗れた)という坂野 潤治さんの話を聴いたばかりである(12月25日の日記)。 与えられた戦後民 主主義の中で、「個人」の確立の問題も、「一身独立して一国独立」という自立 した「個人」が支える成熟した「国家社会」という課題も、残ったままなので ある。 その実現を山下聖秀君たちの世代に託すのは、かなり申訳がない気が する。 戦後60年を経て、大人たちは何をやってきたのか、といわれている わけだから…。
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