小泉信三賞・山下聖秀君の論文2007/01/19 07:08

 1月10日の「福澤先生誕生記念会」で嬉しかったのは、いつもこの会で行 われる小泉信三賞全国高校生小論文コンテストの表彰式で、母校慶應義塾志木 高校3年の山下聖秀(せいしゅう)君が小泉信三賞を受賞したことだった。 15 日に手元に来た『三田評論』1月号に掲載された山下君の論文「己を生きる~ 福澤諭吉と民主主義~」を読んだので、要旨をまとめてみる。 五つある選択 課題の一つ「『学問のすゝめ』を読む」を選んでいる。

 山下君は「ケータイ依存症」から話を起して、現代人の「孤独でいられる能 力」の欠如を指摘、それが人々の馴れ合いを誘発し、強いては人々の独立をも 妨げているという。 戦後民主主義と経済発展が、親密な人間関係こそが人類 の幸せであり、人生の目的であるとする風潮をもたらした。 家庭で子供達は 親の過剰な愛情を一身に受けて育ち、いつまでもその依存関係から自立しよう としない。 日本の社会は人間関係へのエゴイスティックな期待の流行による さまざまな問題を抱えてきており、この流行による「孤独」の排除こそが日本 人の独立の気風を奪ったと言える。 社会学者ゲオルグ・ジンメルは言う「結 びついていると感じるのは、まず別々に離しておいたものだけなのだ」。 己を 知り、他人を知る、それを実現する空間こそが「孤独」に他ならない。 福澤 は言う「心事を丸出しにして颯々と応接すべし。故に交わりを広くするの要は この心事を成る丈け沢山にして、多芸多能一色に偏せず、様々の方向に由って 人に接するに在り」。 他者と少しずつ分かり合える喜びに目をむけ、見栄を去 り、率直で飾らぬ態度で相手と向き合うこと、広く付き合い自分自身を成長さ せることが真の人間関係だ。 現代の相互依存的な人間関係を克服するには「孤 独」と向き合わなければならない。 自己との対峙によりはっきりと自分の意 思が見えたときこそ、本当の自立と人間関係を取り戻すことができる。 現代 人は、親元を離れ独立することや一度「孤独」の中に自分の身をおくといった 「瘠我慢」をしてみる必要がある。 社会に甘えるのではなく、社会を支える 人間になるために、一人一人が自分の力で独立していかなければならない。  「一身独立して一国独立」、福澤のこの言葉は世紀を超えた今なお、私たちに問 い続けている。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
「等々力」を漢字一字で書いて下さい?

コメント:

トラックバック