『西洋事情』が大歓迎された理由 ― 2007/12/18 07:51
11月17日と、12月15日の二回にわたって開かれた、福澤諭吉協会の読書 会に参加させてもらった。 テーマは「『西洋事情』を読む」、講師は井田進也 大妻女子大学比較文化学部教授。 井田さんは『中江兆民全集』編纂の経験か ら得た「無署名論説認定基準」によって、現行『福澤諭吉全集』全21巻(1958 年)の内、9巻を占めている「時事新報論集」には、福沢の筆ではないものも含 まれていることを1996年から指摘してきた方である。 興味深い話が聞ける 予感がし、楽しみにして三田の西校舎へ出かけたのだった。
井田さんはまず、福沢と中江兆民、それに主要事項を並べた年表を作って考 える。(これは大妻の学生にも勧めている方法だという。私は作家の山田風太郎 さんや夢枕獏さんのやり方と同じだと思った。) 『西洋事情』が出るまで、幕 末維新期の知識人は漢文で書かれた地理書によって、不正確な、あいまいで雑 駁な西洋の姿を思い描いてきた。 それゆえ『西洋事情』の正確で豊富な知識 が、大歓迎されたのである。 アヘン戦争敗北の反省に立って中国でいろいろ な本から編集された世界地理歴史百科事典とでもいうべき、魏源『海国図志』 百巻本が舶来したのは、その前年のペリー来航の影響で、福沢が兄に勧められ 砲術修業のために長崎でオランダ語の勉強を始めた1854(安政元)年であった。 『福翁自伝』に目の不自由な砲術家山本物次郎に漢文の時勢論を読んで聞かせ た、とある。 その時勢論の中に、『海国図志』があったのではないか、という のが井田さんの推定だ。

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