三三の「万金丹」2008/07/03 07:20

 柳家三三(さんざ)の「万金丹」である。 三三はいい、期待の星であると いうのが日頃の私の評価だ。 三三は、ひょいひょいと出てきた。 少し青い 顔をしている。 十八でこの世界に入った、前座の修行中、食べ盛りに金がな いから、メシに連れて行ってくれる先輩は神様みたいに見えた。 ステーキ食 いに行こうか、と言われ、ついていくと580円のステーキ定食なんていうのが 東京にはある。 ご飯は好きなだけおかわりしていいというから、半分のステ ーキで五杯おかわり、いやな顔をされたが、あと半分で三杯食った。 恥ずか しながら、ひもじさが先、と旅の二人が道に迷って、明かりを頼りに、寺にた どり着くところから始めた。

 いろりのそばの、鍋の中に雑炊があったが、赤土をよく干したのに、藁を混 ぜたもので、あと左官を飲めば壁が出来るシロモノだった。 聞けば、和尚は 身の戒めだという。 麦飯ぐらいはある。 三日、雨に降られ、もう二三日逗 留させてもらおうとすると、出家する心づもりはないか、という。 融通で、 身の振り方が決まるまで、という坊主が二人出来る。 初五郎の初坊、梅三郎 の梅坊。

 そのうち和尚が京都の本山へ旅に出る。 乱暴狼藉はいかん、酒は慎め、弔 いが出来たら山一つ向うの願経寺に頼め、と言い置いて。 二人が、和尚の麻 の衣で池の鯉をすくい、酔っ払っていると、隣村の万屋金兵衛、今朝ほど死去 つかまつりました、という使いが来る。 和尚は留守だが、京の本山から梅坊 上人が来ているから、と出かけて行く。 南無阿弥陀仏いろはにほへと沖の暗 いのに、といいかげんなお経を読むと、戒名の写しを持って通夜から帰りたい というのが出てくる。 そこで例の、まっ四角の、新型戒名の登場となる。  「官許伊勢浅間」は、棺に経、浅ましくなった。 「霊峰」、礼はいつもより 多いほうがいい。 「万金」は万屋金兵衛、「丹」は、のどに痰がからまって死 んだ。 屋根の草むしりをしておっこって死んだ、といわれ、おっこったんの たんだ。 「但し、白湯にて用ゆべし」、仏様にお茶湯をあげるに及ばない。

 青い顔して出て来た三三、体調でも悪かったのか、ちょっと噺に切れと活気 がなかった。 期待しているのだ。 精進と節制を望みたい。