志ん輔の「柳田格之進」2010/06/02 06:37

 志ん輔は、いきなり「江州彦根の領主、井伊掃部頭の家来、柳田格之進、謹 厳な人物で、水清ければ魚住まず、上役の讒言で浪々の身となり、娘のお絹さ んと浅草阿部川町の裏長屋に住んでいる」と、始めた。 「柳田格之進」のス トーリーは、「春風亭小朝スペシャル独演会2007秋」の小朝のものを、「「柳田 格之進」のあらすじ」(2007.9.23.)、「「桟留革」と小朝の「柳田格之進」」(2007. 9.24.)に書いている。

http://kbaba.asablo.jp/blog/2007/09/23/

http://kbaba.asablo.jp/blog/2007/09/24/

 プログラムの長井好弘さんによると、志ん輔は、師匠志ん朝の主要演目なが ら、この噺が嫌いだという(志ん朝は落語研究会で「柳田格之進」を三回やっ ている)。 疑いをかけられて切腹の決意をした柳田格之進のために、廓に身を 落す娘がかわいそうすぎて、後味が悪いというのだ。

 小朝は、柳田格之進が番頭徳兵衛と主人萬屋源兵衛の二人を一刀のもとに斬 り捨てておいて、客に手元のボタンを押させて、時間を戻した。 主従の情に 手元が狂って、碁盤を斬った柳田が、萬屋主従に言葉を失っていたお絹にだけ はと謝罪させる。 しばしばお絹を見舞った誠意の番頭徳兵衛とやがては一緒 にして、萬屋を継ぎ、ふたりの間に出来た子供が、柳田の家督を継ぐ、一転、 めでたし、めでたしの結末にした。

 志ん輔は、こう演った。 番頭には先がある、私をお斬り下さいという萬屋 源兵衛に、柳田は「黙りなさい。 両名とも斬り捨てなければ、娘絹に対して 申し訳が立たない。 覚悟しなさい。 帰参が叶ってすぐ、絹を請け出し、今 は仏に仕えておる」 えーい、という掛け声とともに碁盤が真っ二つ。 「目 の当たりにした主従の心を見て、心が揺らいだ。 絹、許せよ。 成らぬ堪忍、 するが堪忍」

 志ん輔の重厚な語りが、後味の悪さをかなりの程度、軽減することに成功し た。 この日の落語研究会は、仲入り前の二席と後の二席の、軽薄と重厚の落 差が印象的な会となった。

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