三三の「五目講釈」2015/07/06 06:34

噺家の世界は、身分制度がきっちりしている。 前座、二ツ目、真打、ご臨 終。 居候の噺。 初代が苦労して築いた身代を、二代目、三代目が食いつぶ す。 正蔵。(客は笑う) 手を叩いた人は、同罪。 川柳に、<居候三杯目に はそっと出し>というが、ずうずうしくなると<居候四杯目をばぐっと出し>、 <居候八杯食って胃をこわし>、<居候亭主の留守にし候>。

「どーすんの! どーすんの! 二階の居候」と、かみさんにせっつかれた親 方、お向こうのお光ぁんの所でお茶を飲んで来いと出し、天井を箒でつつく。  もう、ちょっと左、と若旦那。 8時ですよ、ちっとは働こうって了見は、な いんですか。 若旦那、お前のかみさんは、とこぼす。 ご膳をお給仕します、 お鉢の橫に、大きな丼に水、しゃもじが土座衛門のようにプカリプカリ。 叩 き飯、こき飯、寄せ飯、削ぎ飯、叩き飯。

やりたいこと、ある。 コウダン。 道路ですか、住宅ですか。 講釈師。  芸は身を滅ぼすっていいます。 聴いたことないだろ、うまいんだから。 や ってごらんなさい。 一対一でやるもんじゃない、大勢でなきゃ。 本職の噺 家でも、池袋じゃ一対一。 いい親方で、長屋中に声をかける。 昔は町内に 一軒ずつは寄席があった。 親方の二階で居候が講釈をやるってんで、集って 来る。

一番太鼓、二番太鼓、黒紋付に袴で若旦那が登場、市童より似合っている。  タップリたのむよ、イソーロー! 「先生!」と呼べ。 講釈の場合、釈台と いう机を前に置く。 「笑点」の歌丸が使っているやつというと、TBSのスタ ッフがイヤな顔をする、ここは放送では使われない。 卓袱台だと、星一徹み たいだし、跳び箱の一番上だと、かっこうが悪い。 張り扇で、叩く。

頃は元亀三年、武田の軍勢が、遠江三河に攻め入って……。 「先生」とい うのは、まず生きている、先に生れた。 さまざまな作業をする。 エッヘン、 エッヘン、と咳払い。 おもむろに、茶を飲む。 エーーッ、ズッ、ズッ、ズ、 アーーッ、オッホン。 こんなの、楽屋でやってくれば、いいのに。

赤穂義士伝の口上など申し上げます。 鎖帷子一着なし、籠手脛当も覚えの 手の内、地黒の半纏段だら筋、白き木綿の袖印、銀の短冊、襟に掛け、大高源 吾殿、えでたる掛矢振りかざし、手もなく破る表門。 後に続くは、間、磯貝、 近藤勇、土方歳三、大岡越前、さん喬、小里ん、小満ん、市童。 一天にわか にかき曇り、水戸の浪士が十九人、桜田門外に大老井伊直弼の首を刎ねる、死 んだはずだよお富さん、生きていたとは、知らぬ仏の玄冶店、旅ゆけば、清水 の次郎長、海道一の大親分、那須与一宗高、ひきしぼったる弓を発止と放つ、 安倍晋三の胸元に。 帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、人呼んで、 フーテンの寅と発します、垂乳根の胎内よりい出し時、鶴女、鶴女と申せしが、 それは幼名、成長ののちこれを改め清女と申しはべるなり、椎の木林のすぐそ ばに、小さなお山があったとさ。 無事に吉良上野の首級をあげ、本懐遂げた 一行、回向院から永代橋にかかる。 寺坂吉右衛門は、広島へ。 ちょうど、 お時間、これにて失礼。

何なんだ、あの居候。 何でも、生薬屋の若旦那だそうだ。 道理で、いろ いろ調合してあった。