皇族の基本的人権、言論・信教の自由はあるか2020/05/19 07:08

 前にちょっと触れたが、小説『スノードロップ』に「憲法をめぐる禅問答」 という章がある。 内閣法制局長官が参内し、天皇に政府の立場を説明したの を、不二子皇后が記録しているのだ。

 憲法20条第3項に「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活 動をしてはならない。」という規定がございますが、陛下は皇居で神道の儀式を なさっている、これは皇室伝統の宗教行事なので、憲法に抵触しないというの が政府の考えです。 その根拠は、憲法が保証している基本的人権に準じ、陛 下も信教の自由を行使なさることができます、皇居の宗教行事はあくまでも私 的行為と位置付けられるものでございます。 しかし、即位の礼を公費で行っ たが、私的行為なら、私費で行うべきではなかったか? 国民の支持は得られ ておりますので、ご心配には及びません。 宗教的活動とは、実際に布教や勧 誘の活動を行うことを意味し、神社や寺院、教会を訪れ、表敬をするだけであ れば、宗教的活動にならないという立場でございます。 神主にお祓いをして もらったり、玉串を奉納したり、僧侶に読経をしてもらったり、護摩を焚いて もらったりするのは宗教的活動にならないか? その儀式を行うことは宗教的 活動になりますが、その儀式に出席するだけならば、表敬ということになり、 私的行為となるかと思います。

 私たち(皇族)にはどの程度まで基本的人権が認められているのか? 憲法 で基本的人権を保障しておりますのは、国民でございますが、基本的人権は極 めて普遍的な権利でございますから、それを享受する国民の中に天皇皇后両陛 下を始め、皇族の方々も含まれております。 しかしながら、日本国の象徴で あり、日本国民統合の象徴としての地位の天皇陛下とその配偶者であらせられ る皇后陛下、内親王、他の宮家の方々も象徴たる天皇の親族としての地位ゆえ、 享受されるべき基本的人権に制限がございます。 また憲法第4条の国事に関 する行為のみを行って国政に関する機能を有しないという規定による制約がご ざいます。 具体的にどのような権利と自由が認められているのか、また制限 されているのか? 学問の自由、良心の自由といった内心的な自由は保障され ているといって差し支えないと考えます。 ところが、表現の自由、言論の自 由、信教の自由ということになりますと、制約が出てまいります。 陛下が趣 味や芸術や技術のお話をされたり、スポーツ観戦や映画、コンサートにお出か けになること自体は問題にはなりませんが、こと政治的な対立や議論になって いる問題で見解を明らかにされるようなことはお慎みいただかなければなりま せん。 陛下を政治的に利用とする人が出てくるかもしれませんので。

 特定の政治家の考えに与しない、彼らの意見に同意しないことも私的行為と して許されると思うが? ご意見を公表されなければ、問題にはならないと考 えます。 意見を持つのは自由だが、それを表明することはできないというこ とか? おできになれますが、問題が生ずる可能性がございます。 政権を担 う人々とは意見が異なるし、自分の意に反するのは嫌だから、拒否権だけは持 っていたい。 憲法でそれを行使することには制限がかけられているが、その 権利を奪われているわけではない。 もちろん、陛下からその権利を奪うよう なことは許されません。 しかしながら、その拒否権を行使されますと、国政 は大きな混乱に見舞われることになり、陛下の御立場も危うくされることにな りかねません。