中原徳子さんの句集『不孤』上梓2007/12/27 07:45

 不孤(ふこ)、中原徳子さんと知り合ったのは、まだパソコン通信といってい た時代のAsahiネットだった。 私の「等々力短信」の会議室(フォーラム) に洒落たコメントを寄せてくださったり、ネット上の句会でご一緒したからだ った。 中原さんが、私のようなインチキ俳句とちがって、本格的に俳句をな さる方だということは、毎年いただく年賀状に添えられた句で承知していた。

 年酒酌むやゆめ馬齢とは云ふなかれ  (平成14年)

 書初の羊大きく美しく        (平成15年)

 鶏の翔んでもみたや初御空      (平成17年)

 初護摩や煩悩の犬ふところに     (平成18年)

 猪の突きと蹴りこそめでたけれ    (平成19年)

 11月5日、『不孤 中原徳子句集』(角川書店)が刊行された。 この句集に ある<くすみなき煉瓦図書館三田の秋>を墨書してご恵贈いただいた。 拝読 して、衝撃の事実を初めて知る。 中原徳子さんは1958(昭和33)年の香川 県生れ、脳性小児マヒで何度も死にかけて育ち、手足が意のままに動かず、発 語障害もあるのだった。 当時入学できる学校を求めたお父上の決断で東京に 移住、都立光明養護学校、都立千歳丘高校と進み、上智大学文学部福祉学科を 卒業、障害者特別採用枠で日本興業銀行(現みずほコーポレート銀行)に入り 英文資料の翻訳に従事する。 その成長と活躍は、ご両親、双子のお姉さんは もとより、恩師や友人の皆様に支えられ、時代の幸運にも恵まれたらしい。   俳句の師の一人、石寒太氏は序文で、彼女の周囲に支えてくれる大勢のよき仲 間がいるのは、「さまざまなつらいことがいっぱいあっても、彼女がいつも明る く積極的に生き、苦労を微塵も見せない性格だからである」と、書いておられ る。 それで、お会いしたことのない私は、うかつにも不孤さんが障害をお持 ちだということに気づかなかったのだ。

 22年間の305句で編まれた第一句集『不孤』は、『論語』の「徳不孤必有隣」 (徳は孤ならず必ず隣あり)から採り、集中に<徳不孤必有隣信長忌>という 句もある。 「不孤」は、お名前の徳子にかけてここからつけたパソコンの句 会の俳号で、おなじみのものだった。

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