朝から花形歌舞伎、勘三郎の息子達2011/08/27 05:37

 23日、午前11時開演の新橋演舞場、八月花形歌舞伎の第一部を家内と、と てもよい席で観た。 八月は昼の部、夜の部でなく、第三部まであるのだ。 招 待券を頂いて観たので、言いづらいのだが、私の感想の第一は、「歌舞伎にシニ ア料金があったら、松竹はつぶれるだろう」

 まず、北条秀司作の『花魁草(おいらんそう)』。 幕末の安政大地震で江戸や 吉原が焼けた時の話で、現在の状況に重なる。 地震で猿若町から逃げ出した 大部屋役者の幸太郎(獅童)と、吉原を焼け出された女郎・お蝶(福助)が、逃げる 途中の土手で出会い、舟で栃木に帰る米之助(勘太郎)に拾われる。 二人は米 之助の家に間借りして、達磨作りをして暮すようになる。 米之助は世帯を持 てとすすめるが、吉原に居て、年上で、身も心も尽くした男に裏切られ、殺す はめになった暗い過去を持つお蝶は、なかなか踏み切れない。 同衾してはい ないことを、米之助に洩らす。 そんなところに、日光へ出かけた猿若町の座 元勘左衛門(彌十郎)が偶然立ち寄り、幸太郎にようやく復興を果たした芝居に 復帰するよう勧める。 お蝶は、幸太郎と一緒に江戸へ帰ることにして、密か に身を隠す。 幸太郎は座元の期待した通りに出世して、六年後、座長となっ て栃木座での興業へ、船乗り込みをする。 それを見物する群衆の中に、お蝶 の姿があった。

 もう一本は、七之助の人形振りで八百屋お七、「伊達娘恋緋鹿子」『櫓のお七』 である。 大雪の本郷、お七は大店らしい八百屋久兵衛のお嬢様、隣は町木戸、 夜更けで堅く閉ざされている。 お七は寺小姓の吉三郎と恋仲だが、恋焦がれ る吉三郎は、宝剣天国紛失の咎により、今宵中に刀が手に入らなければ、切腹 の運命にある。 吉三郎に刀の所在を知らせたいお七、頼み込んでも町木戸は明 けてもらえず、降りしきる雪の中、お法度を承知で、火の見櫓に登り、太鼓を 打つことになる。 七之助、客席に降りてきたりするサービス満点の舞台で、 人形振りは今一のような気がしたが、とてもきれいだった。

 朝っぱらから、女心のやるせなさの、何たるかを鑑賞する二本だった。 そ の異空間から、暑さの戻った真っ昼間の街へ出た。