奇跡の遺作『大鹿村騒動記』2011/08/15 05:36

私のブログを読んで、今まで一本もアニメ映画を観たことのなかったという 友人が、『コクリコ坂から』を観たというメールをくれた。 追伸に、『大鹿村 騒動記』の終映後に客席から拍手だった、試写会ではこのような光景が時々あ るけれど、映画館では珍しい、とあった。 それで『大鹿村騒動記』(阪本順治 監督)を、11日に丸の内TOEIで観てきた。 朝一番の回、そこそこの入りだ ったが、拍手はおばさんが一人していただけだった。 つまり私はしなかった。

家内のお友達の「マーちゃんの数独日記」というブログに、『大鹿村騒動記』 を、それも岡谷スカラ座で観たという詳細な報告がある。 そういえば、マー ちゃんの蓼科の別荘には以前、家内と寄せて頂いたことがあった。

http://blog.goo.ne.jp/dora0077/e/1a727b5a3d1d45f2a895399501e342af

 よくまとめられていて、付け加えることがない。 ダブリながら、私の感想 も書いておく。

原田芳雄、7月11日に完成披露試写会に車椅子で出ていて、コメントを石橋 蓮司が代読したのをテレビで見た。 その8日後の19日に、亡くなったと聞 いて驚いた。 昨年11月、二週間の現地ロケで全て撮ったというこの映画を 観ると、8か月後に亡くなるなどというところは、微塵も見せていない。 暴 風雨の中、妻の貴子(大楠道代)を探しに行くシーン、平家の武将・悪七兵衛景 清となって大音声を張り上げる場面。

この作品は、演者と観客とその土地とが混然一体となって盛り上がる「大鹿 歌舞伎」への、原田芳雄の思い入れと、原田芳雄で一本撮りたいという阪本順 治監督の思いが、一つになったところから生まれたという。 奇跡的な遺作で ある。 荒井晴彦・阪本順治の脚本が見事だ。 立派に戦った平家の残党景清 が「仇も恨も是まで是まで」、源氏の世は見たくないと、自らの両眼をくりぬく 「大鹿歌舞伎」だけに残る演目「六千両後日文章 重忠館の段」と、18年前に 妻と駆け落ちした幼馴染の治ちゃん(岸部一徳)が、まだら呆けになった妻を「返 すよ」と言って来る話とからめて、一編の喜劇に仕立てた。

普段は男っぽい役柄の佐藤浩市、バスの運転手で、歌舞伎では女形だ。 み んなが稽古している舞台の奥に寄りかかり、白い着物で首を少しかしげて、立 っているだけで、女形になっていたのには、感心した。