小さん「親子酒」のマクラ ― 2012/04/03 03:59
六代目小さんを襲名して、もう5年半、64歳、最近は独演会で古典落語を二 席つなげる試み「一席二噺」をしているそうだ。 例えば「時そば」のそば屋 が転業して「うどん屋」になる「二割五分」、「目黒のさんま」と「松曳き」を 合体して「赤井御門守二席」。(3月22日朝日新聞夕刊)
花が咲くと、花見酒の旨い季節になる。 梅雨が明けて、あの生ビールが旨 い。 月見酒、これも旨い。 冬場、鍋をつつきながらの熱燗、これもまた旨 い。 早い話が、年中旨い。 一門では、会長(小三治)はほとんど飲まない、 前会長の馬風も、今は薄めてなんて軟弱、小満んも飲む相手がいなくなって止 めた。 さん喬は飲むけれど、女とじゃなきゃ飲まない、あれはそういう性格。 ウチの花緑は飲まない、これという趣味もない、博打もしない、何のために噺 家になったのか。 私も日本酒をいやいや飲んでいたら、親父が「ハキハキ飲 むんだ」と。 稽古して、稽古して(噺の稽古じゃない)、電信柱につかまって いたら、「ハキハキが違うんだ」と。
親父は三十で、真打になってから飲み始め、七十で、剣道を少しでも長くや りたいから、止めた。 剣道の予定をまず入れて、仕事を入れる。 先代の文 楽が、どっちが大事なんだと聞いたら、「剣道です」、がっかりしていた。 食 べながら、飲む。 よく食べたんですよ。 中華料理、頼むだけ頼む、弟子は みんな泣きながら食べてた。 懐石は駄目、お姐さんが引っ込むまでの間に、 食べちゃう。 いっしょに旅に行った、宿屋の朝ご飯を五杯食べて、冬の青森 ですよ、駅まで散歩しようと言う、幟に「うどん」とある。 間抜けなうどん 屋で、朝からやっている。 カケなんかじゃなくて、天婦羅うどん。 それを 食いながら、昼飯何にしようか、と言う。 最期の最期まで食べてた。 その 前日、目白の寿司屋の、好きなちらしを食べて、あくる日死んだ。 明日は、 いなり寿司が食いてえな、と姉に言ったと、小三治が姉に聞いた。 それが唯 一の心残り。
先代の馬生に、つきあったことがあるが、ほとんど食べない、何軒か回って 二日酔いになった。 談志も食べない(しみったれで)、飲むだけ。 レモンを 一個揉んで、吸って、飲む、変な飲み方。 ギンナンは食べる、聞いたら「イ チョウによくなる」。
地元で飲む、住んでいる所が遠いから、車で帰るとえれーことになる、教え ませんよ。 とりあえずは東京なんでしょ、と言われて、言わないことにした。 地元のスナックで、男が一人飲んでいたら、女の子が入って来た。 声をかけ ようとすると、あれは女の子じゃないんだよ。 いいよ、俺も男じゃない。
よく子供が生まれると、大きくなったらこいつと飲みてえなんて言う。 ど うなんでしょうねえ、いざ飲むと、そんな面白いもんじゃない。 ウチは師弟 関係でもあったし…。
「親子酒」の本体は、略す。
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