末盛千枝子さんの絵本、待望の復刊 ― 2012/04/21 03:17
高校新聞出身だから、「サンヤツ」という言葉を知っている。 新聞朝刊の下、 全三段を八つに割った出版広告だ。 17日の朝日新聞「サンヤツ」や、15日 の文藝春秋の広告で、「皇后 美智子さまのご本が待望の復刊!」をご覧になっ た方も多かろう。 ご講演の二冊『橋をかける』、『バーゼルより』、そして『THE ANIMALS「どうぶつたち」まど・みちお詩集』(選/英訳・美智子 絵・安野 光雅)。 かつて末盛千枝子さんの「すえもりブックス」から刊行されていた本 である。 講演をしない安野さんが末盛さんに頼まれてした講演で「皇后様に 英訳を頼みに行くという編集者は、まず、いないですよ」と言った本だ。
東日本大震災の被災地に絵本を届ける「3・11絵本プロジェクトいわて」で、 23万冊の本を集め、延べ2千人が携わり、『えほんカー』を6台、寄付や助成 金でつくった活動の代表を務めた末盛千枝子さん、昨年9月5日の朝日新聞夕 刊で、その前年に岩手県八幡平市に移り住んだ事情と、絵本を贈る活動につい て、こう話している。 「岩手県は父(彫刻家の故・舟越保武氏)の出身地。私も子ども時代を過ご し、盛岡でカトリックの洗礼を受けました。今の家は、晩年の父が夏を過ごし たお気に入りの場所でした」「ただ、移ってきたのは、そうせざるを得なかった からです。出版社のすえもりブックスが経営難に陥り、東京の自宅を手放しま した。七転八倒しましたが、ある日『そのようにしなさい、ということなのか』 と思えたら、決心がつきました」
「なぜ死んだのかと嘆くばかりでは、亡くなった人も無念でしょう。私は、 彼らから、たいまつを引き継いでいると思っています。それが、生きる時間を 与えられている者の責任だと思うのです」 「悲しみを抱えた魂に、寄り添い、一 歩を踏み出す力をくれたのが、絵本でした。優れた絵本には、悲しみのひとは けと希望があるのです。いま一度、その力を多くの人に伝えたいと思います」
先ごろ、2010年3月に末盛千枝子さんの『人生に大切なことはすべて絵本か ら教わった』という本を出した現代企画室という出版社から案内が来た。 皇 后様の著作4点を文藝春秋が継承することになった決定を受けて、その他の「す えもりブックス」の出版物を、現代企画室が継承することになったというのだ。 シリーズ名として「末盛千枝子ブックス」と名付け、今までの書籍の再版に加 え、谷川俊太郎さんの翻訳が出来ていたのに、そのままになっていたM・B・ ゴフスタイン作『あなたのひとり旅』を発足第一弾に、以後年内に『人生に大 切なことはすべて絵本から教わった2』、『「3・11絵本プロジェクトいわて」の 記録』を刊行予定という。 末盛千枝子さんが、心をこめて世に贈ってきた絵 本の数々を、また多くの人々が手にすることが出来るようになったことは、ま ことに慶ばしい。
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