さん喬の「棒鱈」 ― 2012/06/08 03:06
メクリに出た「柳家おじさん」に拍手があり(初めての現象)、おじさんは軽 く会釈した。 さん喬、街頭の呼び込みは身体に触れると違法なのだという。 「カラオケいかが」とうるさいが、「カラオケ大丈夫ですか」というのもあった。 最近は、女性だけで酒を飲んでいるテーブルがある。 色の付いたお酒。 女 の人が電信柱につかまって、男が介護している。 キッチン・ドリンカー、 かっこいい、男ならアル中。 (患者の両手が大きく震えている)先生、先生 のお力で、この手は何とかなりませんか。 いえ、そんなには飲みません。 半 分は、こぼれちゃいますから…。
私は居酒屋、それもビールの空き箱が椅子になっているような所で、モツ焼 きを塩で5~6本、トマトのスライスをごく薄く、レモンハイ、梅割り、熱燗、 みんなで1,200円に収めたい、仕上げに生ビール。 ワインというのは、しゃ べらないのが正統らしい、(ソムリエと客、ワインを決めて、飲むまでを仕種だ けでやってみせ)これで成立、手を叩いて頂くほどのものではない、(ウガイを するように、ゴボゴボやって飲み)コメントを言う、「ブルゴーニュの深い森の、 豚小屋の枯れ草の匂い」
品川近くの料理屋で、寅さんと連れの江戸っ子が二人、テェーの塩焼、小鉢 は芋蛸の煮たので、飲んでいる。 蛸ばかり選って食っている連れは、かなり 出来上がっていて、芸者を呼びてえ、若くねえほう、27、8から30デコボコ、 いいノドをして、酒を飲みたがらない、祝儀を欲しがらないのを、と。 隣座 敷は、品川に登楼していたというイモ侍、「おはん」は同僚の大井、大森、蒲田、 五反田を知っているかなどと言って、「アカベロベロの醤油づけ」「イボイボボ ウズのスッパヅケ」を注文している。 まぐろの刺身と蛸の酢のものだ。
芸者にお声を聞かせて下さいと言われた侍、デャーーッと雄叫びを上げ、『も ずのくちばし』という唄を歌う「たぬきゃーの腹づつみがスッポンポン」、もう ひとつ『十二ヶ月』「マチ(松)は一ガチ、一ガチはマチカザリ、二ガチは初午 テンテコテン、三ガチはヒナマツリ、四ガチはオシャカサマ」などとお国なま り丸出し。 江戸っ子はおかしくてたまらず、一々口真似をする。 こういう 粋なのを歌うもんだと、色っぽい都々逸になる。 「飲めぬ酒なら飲ましてや ろう…」、「櫛が落ちてた四畳半…」、「夜明けの鐘がゴンと鳴る…」
小用に立った連れが、「くわんば、くわんば、ぱっぱー」と歌っている隣を覗 こうとして、襖ごと座敷に転がり込んでしまい、「無礼打じゃ」と喧嘩になる。 ちょうど「鱈もどき」をつくっていた板前が仲裁に入った。 胡椒の棒を持っ たまんまだったから、「さあ斬ってくれ、ハクション」「まあまあ、ハクション」 「ハクション、皆の者ひかえろ、この喧嘩これまでじゃ」「また、どうして」「横 合いから、故障が入った」
田中優子さんの解説に、「棒鱈」は、文政から天保にかけての流行語で、「酔 っ払い、酔客」、更には「役に立たない者、でくのぼう、ぼんくら、まぬけ」と いう意味だとあった。
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