日本に代表的な絵画を将来する2012/06/30 01:58

 『私が惚れて買った絵』を読むと、長谷川徳七さんは、ある作家が時代時代 で変化していく、それぞれの時代のよいものを、日本に紹介したい、輸入した いという熱い気持を抱いているのを、感じることができる。 たとえばクロー ド・モネには、いろいろなテーマの連作がある。 1877年からの(1)「サン= ラザール駅」の連作12点、1890年頃の(2)「セーヌ河」の連作と(3)「ボー ト」の連作5点、1892年の少し前からの「積み藁」の連作、1892-3年の(4) 「ルーアン大聖堂」の連作、そして1883年のジヴェルニー移住によって1899 年から取り組み始め、晩年の大テーマとなる(5)「睡蓮」の連作、1899年イギ リス留学中の次男ミッシェルに会いに30年ぶりにロンドンを訪れ、イギリス の風景画家ジョン・コンスタブルやターナーの作品に心打たれて、描いた(6) 「テームズ河風景」の連作である。

クロード・モネのそれぞれの連作から(1)ニューヨークでようやく売りに 出た〈サン=ラザール駅からの線路〉、(2)〈冬のセーヌ〉、(3)100号を超える 大作〈ピンクのボート〉を輸入できたのは画商冥利に尽きるもの、(4)ほとん どが美術館に収まり、売り物は全くと言ってよいほど出てこない〈ルーアン大 聖堂〉、(5)これも同じく一点たりとも売りに出ることのなかった〈睡蓮のあ る池(日本の橋)〉〈睡蓮〉(1906年)、(6)〈国会議事堂 バラ色のシンフォニー〉 を紹介できた。 長谷川さんは、「購入してくださるお客さまの熱意と、美術館 にある最高級の作品を前にしてこのような作品をぜひ日本に入れたいという私 どもの想いがあって、初めて実現できることだと思っている」と言う。

 ポール・セザンヌでいえば、「前期」〈果物入れとビスケットの皿〉、「水浴図」 〈四人の浴婦〉、「アルルカン」〈アルルカン〉、「静物画」〈ラム酒の瓶のある静 物〉、「人物画」〈坐る農夫〉、「最晩年」〈庭の花瓶〉を輸入している。

 パブロ・ピカソでは、「初期」〈広場の入口〉(1900年)、「青の時代」〈海辺の 母子像〉〈酒場の二人の女〉、「バラ色の時代」〈道化役者と子供〉、「キュビスム 時代」〈女の半身像(フェルナンド)〉、「新古典主義の時代」(1917-25)〈母子 像〉〈仔羊を連れたポール、画家の息子、二歳〉、「デフォルメの時代」〈花売り〉 を購入した。

 『私が惚れて買った絵』(1999年)で、所蔵美術館の名前のない作品がある。  今回調べてみて、巻末の謝辞では「株式会社ポーラ化粧品本舗」となっている 箱根の「ポーラ美術館」に、上に挙げたモネとセザンヌの、多くの作品が所蔵 されていることがわかった。 モネでは、〈睡蓮〉(1906年)を除く全て、セザ ンヌでは〈四人の浴婦〉〈アルルカン〉〈ラム酒の瓶のある静物〉が、ポーラ美 術館にある。

小人閑居日記 2012年6月 INDEX2012/06/30 09:58

5476 本駒込、文京区勤労福祉会館の句会<小人閑居日記 2012. 6. 1.>

5477 海外では通じない「和製英語」<小人閑居日記 2012. 6. 2.>

5478 9月古今亭志ん陽になる朝太の「のめる」<小人閑居日記 2012. 6. 3.>

5479 三之助の「転宅」<小人閑居日記 2012. 6. 4.>

5480 権太楼のマクラ「柳家おじさん」<小人閑居日記 2012. 6. 5.>

5481 権太楼「不動坊火焔」の前半<小人閑居日記 2012. 6. 6.>

5482 権太楼「不動坊火焔」の後半<小人閑居日記 2012. 6. 7.>

5483 さん喬の「棒鱈」<小人閑居日記 2012. 6. 8.>

5484 古今亭菊丸の「浜野矩髄」<小人閑居日記 2012. 6. 9.>

5485 恰好の浅草入門『浅草 老舗旦那のランチ』<小人閑居日記 2012. 6. 10.>

5486 三社祭の「堂上げ」「舟渡御」<小人閑居日記 2012. 6. 11.>

5487 三社祭を基本としたコミュニティ<小人閑居日記 2012. 6. 12.>

5488 地方分権(自治)の好例、浅草コミュニティ<小人閑居日記 2012. 6. 13.>

5489 渋沢栄一と福沢諭吉<小人閑居日記 2012. 6. 14.>

5490 「再起動」と「再稼働」<小人閑居日記 2012. 6. 15.>

5491 福沢諭吉の渋沢栄一宛書簡<小人閑居日記 2012. 6. 16.>

5492 福沢書簡に登場する渋沢栄一<小人閑居日記 2012. 6. 17.>

5493 ベオグラードに響いた信時潔の「塾歌」<小人閑居日記 2012. 6. 18.>

5494 「『塾歌』から見えてきた『信時潔』」<小人閑居日記 2012. 6. 19.>

5495 「大学教授 与謝野寛―「幻の塾歌」の周辺―」<小人閑居日記 2012. 6. 20.>

5496 「蛞蝓(なめくぢ)」と「竹落葉」の句会<小人閑居日記 2012. 6. 21.>

5497 季題研究「蛞蝓」と「竹落葉」<小人閑居日記 2012. 6. 22.>

5498 「音楽に包まれた世田谷赤堤の街づくり」<小人閑居日記 2012. 6. 23.>

5499 北里一郎さんの「福沢先生と北里柴三郎」<小人閑居日記 2012. 6. 24.>

5500 報恩の人、北里柴三郎―慶應医学部とコッホ神社<小人閑居日記 2012. 6. 25.>

短信 5501 絵の楽しみと、真贋の鑑定<等々力短信 第1036号 2012. 6.25.>

5502 田端重晟日記からみた福沢と北里<小人閑居日記 2012. 6. 26.>

5503 谷口吉郎設計の幼稚舎本館<小人閑居日記 2012. 6. 27.>

5504 広尾狸蕎麦別荘…高橋義雄、福沢範一郎さん<小人閑居日記 2012. 6. 28.>

5505 ギャングスターの泰西名画コレクション<小人閑居日記 2012. 6. 29.>

5506 日本に代表的な絵画を将来する<小人閑居日記 2012. 6. 30.>