「宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った」展 ― 2025/03/23 07:21
『日曜美術館』で見て、家内がぜひ見たいというので、5日に東京ステーションギャラリーの「宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った」展へ行った。 10時の開館時間に合わせて行ったのに、東京駅丸の内北口を出ようとしたら、行列になっているので、驚いた。 恐るべし『日曜美術館』、入口の係の人は、テレビでやってから、この状態です、と言っていた。 小さな作品が多いから、人だかりになると見にくいけれど、こちらもヤジ馬なのだから仕方がない。
宮脇綾子(1905~95)さんは、東京出身で、洋画家の宮脇晴さんと結婚して名古屋に暮らした。 ほぼ私の父母の世代の人で、終戦を迎えた時、「このままなにもせずに死んでしまってはつまらない」と、40歳からアップリケ制作を始めたのだそうだ。 素材は、身近なハギレ類、使い古したタオルや柔道着、蚤の市で手に入れた布、石油ストーブの芯や使い終ったコーヒーフィルターまで、多種多様なものを使っている。 その模様を活かして、トマトやネギ、魚の切り身や干物、野の草花などなど、生活のなかで目にしたものをモチーフに作品がつくられる。 配色や、バックの色にも、センスが感じられた。 大きな《そまの道具》《高枝切り》など、造形的な面白さを狙った作品もある。
どの作品にも、落款のように綾子の「あ」の字が縫い付けられている。 それには、「あっ」という驚きの意味も込められているという。 モチーフに合った素材の発見の喜び、「見立て」の決まった満足感が、そこにはある。
宮脇綾子さんは、新しい布が手に入ると、それぞれ小さな魚と干し柿の形に切り抜いて、画帖に貼っていた。 その画帖は数十巻にもなり、1万以上の魚(《縞魚型文様集》など)と干し柿が貼り付けられている。 《縞木綿千柿図屏風》という作品になっていた。 《「はりえ日記」第11巻》だけがあったが、毎日、何かを貼り付け、詩のような言葉を書き、その日の出来事も書き留めた「はりえ日記」にも圧倒される。 執拗さ、粘り強さを感じるけれど、それは、けして苦労でなく、楽しんでやられているのだ。 僭越ながら、どこぞの日記に通じるものがあるのかなどと、思ったことだった。
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