入船亭扇治の「花筏」2007/06/02 07:40

 入船亭扇治、細身の体、垂れ目長めの柔和な顔、お行儀の良さと真面目さが 目立つ扇橋さんの弟子の中では、少し外れた「おとぼけ系」といったところか。  寄席の代演では、同じようなキャリア、同じ芸風の人を持ってくる、と言う。  円歌なら馬風、小朝なら義理の弟の正蔵、扇治なら中村橋之助、と。 ひとの 代役は、気を遣うというところから「花筏(はないかだ)」に入る。

 「花筏」は相撲の噺、病気の大関花筏によく似ている提灯屋にかっこうだけ でいいからと、手間賃の倍(一日二分)と飲み食い付きで頼み込み、銚子へ一 週間の巡業に出る。 千秋楽、土地の庄屋の倅で、素人相撲の力自慢、勝ちっ ぱなしの千鳥ヶ浜大五郎と、どうしても戦わなければならなくなる。 病気で 相撲をとらない花筏が宿に帰ると、ドンブリで五、六杯の飯を食い、浴びるほ ど酒を飲んでいたからだ。 双方がすぐに尻餅をついて負ける気で土俵に上が り、仕切る間、双方涙ポロポロ、脇の下冷汗タラタラ、千鳥ヶ浜は相手が「南 無阿弥陀仏」と唱えるのを聞いてしまう。 手を前に出しただけの大関花筏、 実ハ提灯屋の張り手が決まり、即座に千鳥ヶ浜は負ける。 張るのが巧いはず だ、提灯屋という落ち。

 扇治、細身で、やさしい愉快な顔だから、どうも相撲の噺が似合わない。 そ のせいばかりではないだろう、前頭でいえば前半戦、せいぜい高見盛が出る あたりという出来だった。