瀧川鯉昇のマクラ、詳報(長文注意)2007/06/03 07:01

 鯉昇は、昔「よく来たな」と演っていた噺家のように、恐い顔をしているが、 言葉はとても丁寧だ。 その落差が、また可笑しい。 ハッキリしない天気が 続くけれど、ずっとハッキリしない人生を送ってきたので、すごしやすいとい う。 それでも肩こりがあって、医者は左右の視力が違い過ぎているからだろ うという。 電車で隣の人が読んでいる新聞を読む癖があるので、そのせいら しい。 右隣の人も、新聞を読んでくれるといいんだけれど…。 耳鳴りもあ る。 セミの鳴くのが、聞こえる。 原因は「かれー」だというので、しばら く食べないようにしている。 「とういじょうを飲んでください」と薬をくれ たので、13粒ずつ飲んでいる。 セミの声だけでなく、それを捕っている子供 の声が聞こえるようになった。 医者は心配いらないという。 子供の姿まで 見えるようになったけれど、医者はまだ心配いらない、その子供と会話するよ うになったら、もう一遍来てください、と言った。

 化粧品のコマーシャル、塗る前からきれいな人が出ている。 あれは、塗っ たら、きれいになる人にしないとダメ。 健康ドリンクのコマーシャル、若く て丈夫そうな人が飲んでもダメだ。 病院のベッドで105,6歳のおじいさんが、 点滴やら何やら管だらけになって、虫の息になっている。 周りには医者や看 護師、親戚の人が集まっていて、中にはもう数珠を手に持っている人もいる。  そのおじいさんが、一口健康ドリンクを飲み、たちまち親類に(指を二本立て て)「イェーイ」という、のでなければ…。

 食えない噺家稼業で、ずっと麦飯を食べてきた。 ようやく近年少しは寄席 にも出られるようになって、少しずつ麦の割合を減らし、ようやく白い米を食 べられるようになった。 すると健康食品ブームで、麦を混ぜるといいという 話になった。 折角外した麦を、また加えるようになった。 そのうちに、ア ワ、ヒエ、コーリャンがいいというので、これも混ぜる。 何のことはない、 鳥の餌だ。 年内には、空を飛べるようになるだろう。 高座に出ても、座布 団はいらなくなる。 電線が二本あればいい。

 静岡の生れだが、親類は有難い。 毎年、連休が明けて、三、四日たつと、 ドサッーッとお茶が送られて来る。 去年の新茶だ、山ほど来る。 親類は有 難い、親類ならでは、のことだ。 子供の頃、お茶畑で遊んだ。 冬になると、 茶の木に、小さな実がなる。 その実を、石合戦の代りに、ぶつけ合って遊ん だものだ。 ちゃのみともだち。 ここから「茶の湯」に入る。