福岡正夫先生の「高橋誠一郎先生の経済学史研究」2007/06/17 07:08

 次は福岡正夫名誉教授の「高橋誠一郎先生の経済学史研究」である。 声が おかしい。 風邪でも引かれたか、と思ったら、マイクが機能していなかった。  福岡先生はお元気で、マイク無しでも、十分なのであった。 福岡先生の話は むずかしい。 一生懸命かつ熱心なので、一般人(私などは大昔、経済原論の 講義を聴いたから、その範疇に属するかいささか疑問だが…)を相手にして、 手加減ということがない。 昨年5月11日の「小泉信三博士歿後40年記念講 演会」でも「経済学者小泉信三」というお話を聴いたが、その会のことを書い た5月13日の日記でも、歯が立たなかったのだろう、内容には触れていなか った。 今回も、ほとんど同じくである。 福岡先生は去年の会のあと、現役 の学生と話をする機会があって、「諸君にとって小泉先生や高橋先生は“伝説の 人”でしょうが」と言ったら、「われわれには福岡先生も“伝説の人”です」と 言われたそうだ。

 福岡先生は戦争中、学生として高橋先生の講義を拝聴した。 結婚披露宴で は、50分にわたる丁重なご祝辞をいただいた。 経済学部長の時には、アダム・ スミス歿後250年という対談を『三田評論』でした。 そうした在りし日の高 橋先生の思い出は、時間の関係ではしょるとして、福岡先生は経済学史研究の 話に入った(その思い出の方を聞きたかった)。

 経済学説史において、高橋誠一郎先生の存在は、余人をして替え難い。 代 表的な三冊の著作は、『経済学前史』(1929年)、『重商主義経済学説研究』(1932 年)、『経済学史』(上←下はない)(1937年)である。 わからないながらに、 私が聴いてポイントと思われた点を挙げてみる。 18世紀後半にアダム・スミ スの『国富論』が出て確立されたとされる経済学だが、その断片はギリシャ・ ローマの時代からあったことを指摘して、その前史を通史としてまとめたのが、 『経済学前史』。 それぞれの時代の視点に立って、その事情や由来を懇切に説 明しているのが特色だという。 『重商主義経済学説研究』では、重商主義は 自由主義の敵ではなく、自由主義は重商主義そのものから出てきたものだと先 駆的に説いた。 『経済学史』での高橋説の重要な二点。 効用価値説は、労 働価値説・費用説に先立って長い歴史を持っていたこと。 労働価値説・費用 説そのものがイギリス古典学派の専売特許ではなく、ドイツ、フランス、イタ リアの学者によって、初期の頃から唱えられていたこと。