ひな太郎の「酢豆腐」2009/07/16 07:17

 桂ひな太郎、よく見た顔だと思ったら、志ん朝の弟子で志ん上、平成14年 に志ん朝が死んで、九代目桂文楽の弟子になった。 ひさしぶりに見たが、さ すがに安心して聴いていられる。 町内の若い者が集まっていて、暑気払いに 一杯やろうということになる。 幸い銭がなくても顔が利く金ちゃんが、二升 提げて来た。 あとは肴だ。 安くて、銘々に渡る数があり、腹にたまらない で、見場がよくて、衛生にいいものを、探す。 古漬を出して覚弥(隔夜とも 書く→『広辞苑』ご参照)の香香(こうこ)をという妙案が出るが、台所の床下の桶から古漬を出そうという奴がいない。

半公は、小間物屋の美い坊が噂してたよと言われて、上がって来る。 美い 坊は、半ちゃんは男らしい男、人に物を頼まれたらイヤとは言えない、立引の 強いところ、江戸っ子に惚れたという。 半ちゃんは古漬を出してくれと言わ れて、ンーン、ンーンと唸り、えーっ、さようならと逃げるところを捕まって、 香香を買う銭を出すと、指五本。 五十銭で示談だ、初犯だから許そうとなる。  そのあと、伊勢屋の若旦那が通り、コンツワ、イツフク、ねえスンちゃん、ロ ウへ参りやした、花魁は初カボのベタボ、拙のまぶたに口づけとなり、自称ご 通家の若旦那は、目ピリ、鼻ツンの「酢豆腐」を食すことになる。

 「等々力短信」千号の内祝に「千両箱」、日本橋さるやの楊枝の千両箱を用意 していた私は、肴を探す若い衆の中に楊枝はどうだ、というのがいるのに笑っ てしまった。 安くて、銘々に渡る数があり、腹にたまらないで、見場がよく て、衛生にいいもの。 「酢豆腐」は、頭になかった。