『泣き虫なまいき石川啄木』を読む2010/03/27 06:59

 『泣き虫なまいき石川啄木』を読む。 啄木が26歳の若さで病死したのは 明治45(1912)年4月、その前の三年間、一家は本郷弓町の理髪店「喜之床」 の二階で間借り生活をしていた。 登場人物は、石川一(24・啄木)、妻節子 (24)、一の父一禎(59)、母カツ(62)、妹光子(22)、金田一京助。 一が電 車賃もないため、朝日新聞社校正係に出社しないのではと心配して、友人金田 一が様子を見に来る。 そしていつものように、背広の内隠しからお札を渡す。  借金と質屋通いに明け暮れる極貧の生活だ。

 第3場は「自殺常習人」という題。 節子に家出された一の台詞、「つまり 妻に捨てられたといふことは、妻から、あなたは天才詩人でもないし、小説家 になれる器量もない、ひつくるめてあなたになんか才能のサの字もないのよ、 と宣告されたのと同じことだつたのです。妻から「あなたは天才よ、きつと大 きなことを仕出かす人よ」と囁かれ、それを真に受け、そのつもりで生きてき た僕ですから、妻に捨てられたことはフフフフ(二人(金田一とカツ)恐怖) 死の宣告。未来はない」

 節子とカツは、嫁と姑の果てしない争いをくりかえす。 ト書きに「校正中 の一の動作がしばしば停止するのは、この「実人生の白兵戦」が一々彼の心を 傷つけてゐるからである。しかし一はその度に頭を振つてなにかを振り払ひ、 仕事を再開する。」(第4場「父の上京」)

 妻と親友宮崎郁雨との仲を疑わざるを得ない一、「情けない、節子も郁雨情け ない。(急に激して)妻と親友とに同時に裏切られて。この先、僕はどうやって 生きて行けばいいんだ。」(第6場「髪を断つ」)

 金田一に一は言う「よく知つておいでのやうに、僕の家は返済すべき借金は 多いし、前借につぐ前借で内証は火の車です。ひとことでいへば極め付きの大 貧乏。そのせゐで家の中のイザコザは絶えたことがない。さうしてこれは僕の 家の宿命だと諦めてゐた。ところが幸徳秋水らの国禁の書を読むと、どうも僕 の家とよく似た家がそこいら中にあることがわかつてきた。自分の苦しみが自 分だけではなくみんなとつながつてゐるといふことに気付きはじめた。僕は泣 きました。」「うれし泣き。東京中の、いや日本中の貧しい家々の、その家の中 でくりひろげられてゐる地獄絵巻を自分も共有してゐるのだといふ奇妙なうれ しさ。」(第5場「国禁の書」)

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